カンボジア:社員がボランティアでカンボジアの識字学校を視察

2019.03.01 Field Report

2019年2月8日〜11日、社内公募で選ばれた海外ボランティア特派員がカンボジアを訪問。社員の寄付によって寄贈したソーラーランタンなどが、どのように活用されているのかを視察してきました。

カンボジアを中心に教育支援を行う「JHP・学校をつくる会」は、設立25周年を迎える節目の年に、「ASACカンボジアに学校を贈る会」(2018年に閉会)から引き継いだ識字教育事業を本格的に始動。パナソニックは、みんなで"AKARI"アクションとして、インターネットによる寄付(クラウドファンディング)で社員から寄付を募り、2018年10月の開校式にソーラーランタン120台とソーラーストレージ16台を寄贈しました。

今回の視察では、社員のボランティア特派員4名が、JHP・学校をつくる会が活動するカンボジア南東部のコンポンチャム州バティエ郡トロップコミューンにある4つの村を訪れました。識字学校は個人宅の一角などを利用しているため、寄贈されたソーラーランタンやソーラーストレージは、毎回、授業前に先生によって文字が見えやすくなるようにセッティングされます。そして、ソーラーランタンは生徒たちに貸し出され、夜道を通学する際に使用されます。これにより、生徒たちは安心して識字学校へ来ることが可能となりました。

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部屋にセッティングされたソーラーストレージ

訪問した先がなぜあかりが必要なのか、その村が抱える課題や暮らしがどのようなものか。ボランティア特派員それぞれの視点で取材し、レポートします。

あかり、水・・・。さまざまな課題とともに暮らす村人たち

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今回訪問した4つの村のうち、2つの村の村長から、村の困りごとについて話を伺うことができました。

村人たちは、バッテリー式のヘッドライトや懐中電灯であかりを確保しているそうなのですが、質は決して高いとは言えず、頻繁に電池を交換したり、故障による買い換えが必要だったりするとのこと。金銭的に余裕がない村人は、暗闇の中、トイレに行ったり、農作業をしたりしているそうです。

また、あかりに加え、きれいな水を確保できないことも問題だといいます。 とくに乾期で暑い時期になると、気温は35℃を超え、雨はほとんど降りません。きれいな水はおろか、井戸水を用いたとしても水不足に陥ってしまうそうで、その際は、近隣の村まで水をもらいに行ったり、買いに行ったりするそうです。また、井戸水が原因で、感染症や腹痛を引き起こす村人も多いようです。病院は地域にひとつあるのみで、薬剤に関する正しい知識を持つ人がほとんどいないため、薬の誤使用による事故も後を絶たないとのことでした。

さまざまな課題がある中、村長は「村人が困っているのは理解しているが、助け方が分からない」と語っていました。その悲しげな姿と、周囲を無邪気に走り回る子どもたちの姿が脳裏に焼き付いて離れませんでした。(金子香平さん)

子どもたちの夢を応援するソーラーランタン

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識字学校では、30~50代の村民たちが母国語の読み書きや数字の計算を習得するために、ソーラーランタンのあかりを使って、夜遅くまで熱心に勉強していました。

彼らが勉強する一番の理由は、「収入を上げるため」だそうです。
JHP・学校をつくる会の辰川はる奈さんいわく、識字や計算ができないと、市場で騙されてしまったり、仕事が得られなかったりと生活する上で不利になってしまうそうです。

ある生徒に話を聞くと、朝6時から工場で働いているため、朝4時に起きて暗闇の中、教室から借りているソーラーランタンのあかりで朝食の支度をしているそうです。就業後は家に戻り、ソーラーランタンのあかりを使って晩御飯を準備し、家族で食事をしたあと、識字学校へ行き、夜20時頃まで勉強しているとのこと。収入のためとはいえ、このようなハードな生活を続けることは並大抵のことではありません。

彼、彼女らに夢を聞いてみると、
「パゴダに行ってダーマ(仏教における法)を読めるようになりたい」
「お経を読めるようになりたい」
「今は農家だけど、計算ができるようになって将来はお店を開いて物を売りたい」
「農業の本をたくさん読んで、作物をたくさん作れる様になりたい」
など、貧しいながら、真面目で前向きな思いが伝わってきました。
(田中正和さん)

学びたいすべての村人が教育を受けられるように

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文字の読み書きを習うことができ、さらにソーラーランタンを貸与してもらえることから人気の識字学校は、定員が25名と決まっており、誰でも通えるわけではないそうです。

トマイ村で農家を営むLim Laenさんは、4年生まで小学校に通っていたため、ある程度は読み書きや計算ができるそうです。もっと学びたい意欲はあるのですが、字がまったく読めない村人が優先されるため、いまは識字学校に通うことができないようです。

また、トマイ村のCaen Noyさんは、2年間識字学校に通ったものの、やめてしまったとのこと。今は復学を希望していますが、少しは字が読めるので、なかなか順番が回ってこないとのことでした。

識字学校で学びたいすべての村人が教育を受けられるようになるためにはどうしたらよいのか、いろいろ考えさせられました。(藤本諒さん)

識字学校修了後、道を自ら切り開いた女性たち

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半年間の識字学校を修了した後、新たな仕事を始めることができた2名の女性に話を伺うことができました。

プノントック村の農家Phon Lekさんは、識字教室修了後も自学自習を続け、裁縫の仕事を始めることができました。「文字や計算を覚えたおかげで、金勘定などで騙されることがなくなり、仕事ができるようになった。もっと仕事を増やしていきたい」と、嬉しそうに夢を話してくれました。彼女には3人の子どもがいますが、収入が増えたことで末息子(Von Veat)さんも小学校に通えるようになり、今では親子で勉強し、互いに読み書きを教え合っているそうです。

トマール・ケイブ村のHea Yuonさんは、友人から結婚式の招待状を受けとったものの、誰の結婚式かわからなかったことがショックで勉強しようと決めたといいます。読み書きができるようになった彼女は「初めての場所に行くのも不安ではなくなった」とのこと。読み書きできることが自信につながり、自宅でクッキーやキャンディの販売も始めたそうです。

ソーラーランタンが照らす識字学校に通い、読み書きや計算ができるようになったことが自信につながり、夢への一歩をしっかり踏み出している二人の女性の話を聞いて、こちらまで勇気づけられました。(大前友香さん)

次回は、ボランティア特派員として、「みんなで"AKARI"アクション」プロジェクトに参加してみて初めてわかったことや、感想をレポートします。