インド:お守り作りの手元を照らす明かり

2013.10.01 Field Report

インド東部の西ベンガル州。寄贈先の家庭を夕方訪ねると、手作りのお守りを販売して生活している父親の手元をコンパクトソーラーライトが照らしていました。

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こんにちは。インド担当の奥田です。

私は2012年10月にCSR・社会文化グループに配属されたばかりなのですが、最初に担当することになったのがこの「ソーラーランタン10万台プロジェクト」です。ソーラーランタンが現地の人々の生活向上に真に役立つものでありたいとの思いから、現地のニーズを確かめに、インドの約20の寄贈先家庭を訪ねてきました。

ウエストベンガルの農村地域の電力事情

インドでは、貧困ライン*1以下の家庭を対象に、4つのパートナー団体と協力して5000台のコンパクトソーラーライトを2013年3月に寄贈しました。

人口の約3割が貧困ライン以下で生活しており、農村では、ほとんどの家庭が作物を自給自足しながら、地主の元で働いてわずかな賃金を得て、あるいは大都市に出稼ぎに行くことで、最低限の暮らしを維持しています。

最初に訪れたのは、ウエストベンガル州の州都コルカタから車で南西方向に数時間のところにあるバンスベリヤー村でした。

農村地域の多くは、幹線道路までは電気がきていますが、1日中安定して使用できることはなく、使えても2~3時間程度だそうです。また、村の中までは電気が届いていないことが多く、村人が勝手に電線を引き込んでいる場合があります。法的に禁止されているこうした「盗電」は大きな社会問題になっている上、今の季節は雨季で、感電の危険性があります。

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村の様子

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盗電用の電線がいたるところに見られました。

ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)Sahajと連携して

この地域でのパートナーは、Sahaj(サハジ)というソーシャルエンタープライズ*2です。

Sahajは、農村でパソコンやファックス、プリンターなどを安価で利用できるコミュニティセンターを運営しています。ネットカフェのイメージに近いのですが、娯楽用というよりは、農業情報や職探し、就職活動で書類の提出が必要になった時などに利用するそうです。展開地域はウエストベンガル州をはじめとする6州2万8千ヶ所と、各村にひとつはコミュニケーションセンターがある計算で、この大きなネットワークがパートナー選定理由の1つでもありました。

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贈呈されたばかりのコンパクトソーラーライトを手にSahajの担当者の説明を聞く女性。

お守りづくりをする家族を訪ねて

「これ、橋? 本当に渡っていくの?」

思わず尋ねてしまったほどのか細い橋を渡ると、島のような場所に、2世帯が暮らしていました。8人の大家族ですが、現金収入があるのはお父さんだけ。1個10ルピー(約16円)のお守りを月に100個ほど、近隣のマーケットで販売して生計を立てているそうです。

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この「橋」を渡ったところに家があります。いつ落ちるかとハラハラ...

夕方、涼しくなってから仕事を始めるお父さんは、もともと小さな懐中電灯を手元に置いて仕事をしていました。

「コンパクトソーラーライトは懐中電灯よりもかなり明るく、手元がしっかり照らされるので、作業がはかどって助かるよ」とお父さん。また電池のことを気にしなくて済むので、夜遅くまで仕事ができるようになったそうです。

また、トイレが外にあるため、夜間の外出用ライトとしてもコンパクトソーラーライトが重宝されていました。当然街灯などはなく真っ暗な上、この地域では毒へびなども出るため、明かりは必須です。

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お守りづくりをするお父さん。「コンパクトソーラーライトのおかげで夜まで作業ができる」と喜んでいました。

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コンパクトソーラーライトの明かりがとても明るく感じました。

ウエストベンガルでは、配布が始まって1ヶ月程度ということもあり、本格的に利用されるのはまだまだこれからとのこと。今後、各家庭でどのように活用されていくのかを、引き続き見守っていきたいと思います。

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カマドの火とコンパクトソーラーライトと星空が、幻想的な雰囲気を醸し出していました。

  1. 州ごとに基準は異なるが、都市では、1日28.65ルピー、農村では、22ルピー以下で暮らしている人々。インドでは、国民の29.8%が貧困ライン以下で生活している。 (http://www.theindianeconomy.com/216004/29-8-of-total-population-below-poverty-line
  2. 社会問題の解決を主な目的として収益事業に取り組む事業体