開発チームが語る、新型ソーラーランタン進化のポイント

2013.12.11 News

無電化地域で暮らす人々のニーズに応え、「明るさ」「利用者視点に立った機能」「小型化とコストダウン」の点で進化した新製品の特徴を、開発メンバーが紹介します。

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パナソニックのソーラーランタンは、無電化地域の人々の暮らしの改善に真に役立つものとなるよう、現地のニーズをしっかりと受け止めながら、進化を続けています。

2013年10月には、現地の方々の声を受けて改良された新しいモデルが発表されました。ソーラーランタン10万台プロジェクトでは、今後この新しいモデルを寄贈していきます。

開発に携わったメンバーが、新しいソーラーランタンの特徴を語ります。


【新型ソーラーランタン 進化のポイント】

  1. 部屋を広範囲に照らすことができる100ルクスの明るさ
  2. 利用者視点に立った機能の追加(要望の多い携帯電話の充電機能など)
  3. 壊れにくい品質を保ちながらの小型化とコストダウン

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利用者の声を反映して改良された新しいソーラーランタン

ニーズ―無電化地域の人々がいま切実に求める「明かり」とは

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アジア大洋州の電池・電池応用商品営業を統括するゼネラルマネージャーの谷本卓也。本当に必要としている人の手元に届けるために、NGO・ソーシャルエンタープライズ(社会的企業)ルートなどこれまでと全く異なる販路開拓に挑む。

新しいソーラーランタンを開発する最初のステップとして、担当するアジア各国の無電化地域を訪ね歩き、現地の家庭や、生活環境改善に取り組む非営利組織や行政機関に話を聞きました。

無電化地域において、「明かり」は、貧困の問題と深く結びついています。 明かりがないと、女性は明るいうちに家事をやらざるを得ないため、日中仕事をする時間が奪われます。子どもは日が落ちると勉強ができず、教育の遅れにつながります。明かりがないことが様々な制約につながり、貧困からなかなか抜け出せない状況になっているのです。

多くの人々は、夜間の明かりとして、ケロシンランプ(灯油ランプ)を利用しています。しかし手元しか照らせず明るさは不十分で、炎がちらつき作業や勉強には不向きです。燃料費がかかる上、出る煙は健康に深刻な影響を及ぼしています。

ソーラーランタンは、パナソニックの得意分野である照明や電池、ソーラーエネルギー技術を利用した製品です。各地を回りながら、私はパナソニックが持っている技術を人々の生活向上に役立てたいという想いを強くしました。

実は各国の無電化地域では安価なソーラーランタンが流通しています。ただ、明るさが不十分なうえ壊れやすく、電池もすぐに消耗してしまうという声を多く聞きました。 我々のこれまでのソーラーランタンはどうか。そうした問題はないものの、サイズが大きく製造・輸送のコストがかかり高くなってしまう、明かり以外にも携帯電話を充電する電源としての機能も求められている、といった課題が見えてきました。

こうした現地の声を踏まえて、新しいソーラーランタンでは、

  • 部屋を広範囲に照らすことができる100ルクスの明るさ
  • 利用者視点に立った機能の追加(要望の多い携帯電話の充電機能など)
  • 壊れにくい品質を保ちながらの小型化とコストダウン

を実現したいと考え、開発チームに託しました。

デザイン―生活照明としての明るさと、現地での使いやすさを追求

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デザイン担当の能見拓男は、製品デザインのプロフェッショナル。常にプロジェクトを俯瞰し、多様な視点で見ることを心がけ、時に熱くメンバーを引っ張る役割。手前はこれまで手がけてきたソーラーランタンとコンパクトソーラーライト。

現地の声を受け、まず外観面では、コストダウンの観点から設計を変え、製品のサイズを前回の半分以下にしました。

一方明るさの面では、100ルクスという照度の目標に加え、仕事や勉強がしやすい光の質を目指しました。ソーラーランタンでは、光源としてのLED と、光を反射し拡散させるリフレクター(反射板)とシェードの組み合わせで、明るさを実現します。

はじめは光の拡散を重視し鏡面メッキのリフレクターを使ってみましたが、反射しすぎてギラギラしてしまい、生活照明としては不向きでした。また、単純に照度を高めるには透明なシェードが望ましいのですが、実際に試してみるとリフレクターで反射させた光がまぶしく、不均一に照らされてしまいます。納得のいく光の質を求め、何通りもの組み合わせを、技術チームと一緒に検討しました。

機能の面では、吊るす、立てかける、壁にかける、持ち歩くなど、様々なシーンで使えるハンドルを取り付けました。一見なんの変哲もないハンドルですが、中央部分のW型の形状は、実はもっともこだわった部分のひとつ。吊るしても、立てかけても安定するバランスに調整しました。

あえてコストがかかってもこだわったのは、ランタンとソーラーパネルをつなぐケーブルの長さです。盗難の心配から外にランタンを出したくないという人が多いため、室内にランタンを置いたまま、日当たりのいい屋根にパネルを置いて充電できるよう、通常は2、3メートル程度のケーブルの長さを5メートルにしました。こういった点も、現地の方に安心して使ってもらえるよう工夫した部分です。

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ハンドルの中央にW型のくぼみがあり、吊るしたり立てかけたりすることができます。

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インドの無電化地域に赴き、現地調査を実施。無電化地域の人々の声を直接聞いて反映することで、利用者視点に立った製品デザインを追求しました。

製品化―コストダウンを図りながらアイデアと品質を実現

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「コストがかけられなくても、品質のいいものを作るのは当たり前。価格を抑えるために品質を下げるという発想はありません」とパナソニックのモノづくりに対する哲学を語る、機構設計担当の浦登志一(左)と回路設計担当の長島健彰(右)。

製品化に向けて、コストダウンをしながら、どうデザインチームのアイデアを取り入れ、求められるスペックと品質を実現させるのかが、技術チームに課せられた課題でした。

まず、前回のソーラーランタンでは3つあった回路基板を1つに集約することと、部品点数を極力減らすことに取り組みました。回路基板の数や部品点数の削減は、そのまま、材料費や製造コストの削減に直結します。

さらに外装には、私たちが開発している製品で一般的に使用している実績のある樹脂を採用しました。共同で大量に仕入れることにより、安価に調達することが可能となります。パナソニックの総合力があってこそ実現できたコスト削減でした。

もっとも苦労したのは、明るさです。照度と光の質を同時に追求するため、リフレクターやシェードの素材、加工方法など何か1つを変更する度に、内部の回路も設計し直さなければなりませんでした。

最終的に、ひとつひとつは0.2ワットと安価で小さなLEDを5つ使用し、リフレクターとシボ加工(樹脂の表面に形成する微細な模様)付きの半透明のシェードを採用しました。光は360度方向に広がり、細かい作業をするにも目に優しい光となっています。5個の大きな電球が光っているように見えるため、100ルクスという照度に加え、感覚的に照度以上の明るさが感じられる明かりを実現しています。

また要望の多かった携帯電話を充電したいという現地の声にも対応しています。実際に無電化地域の人々が利用している携帯電話で試験を行い、求められる電源性能を把握したうえで、USB出力による充電機能を搭載しました。

パナソニックは、現地でも信頼できるブランドとして認知されていますので、信頼に応える品質をいかに手の届く価格で提供できるかが、今回の挑戦でした。電池は消耗品なので2年ほどで交換する必要がありますが、それさえすれば10年は使えるだけの丈夫な設計をしました。完成したソーラーランタンは、現地の期待に十分に応えられるものになっていると思います。

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試作を重ね、現地の期待に応える品質を追求しました。


新しいソーラーランタンには、現地の人々の生活向上に真に役立つものになってほしいとの、開発メンバーの強い想いと工夫が込められています。このソーラーランタンを一人でも多くの方に届け、無電化地域に人々の笑顔を増やすために―パナソニックの挑戦は続きます。

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ミャンマーでの市場調査時、ソーラーランタンを手に笑顔を見せる男性。

製品の仕様

商品 ソーラーランタン
品番 BG-BL03
LEDモード
明るさ 100lx 40lx 6lx
駆動時間 約6時間 約15時間 約90時間
充電時間 約6時間(ソーラーパネル充電のみ)
電源 ニッケル水素電池
ソーラーパネル出力 3.5W
サイズ 本体:約138 (L) × 133 (W) × 60mm (H)
ソーラーパネル:約206 (L) × 186 (W) × 39mm (H)
質量 本体 約400g、ソーラーパネル 約630g

※ 本製品は、公益財団法人日本デザイン振興会の「2013年度 グッドデザイン賞」、国際ユニヴァーサルデザイン協議会(IAUD)の「IAUDアウォード2013 ソーシャルデザイン部門 銀賞」を受賞しています。
※ここでご紹介しているソーラーランタンBG-BL03は国内では販売しておりません

開発メンバーの紹介

news_08.jpgパナソニック コンシューマー マーケティング
アジアパシフィック社
エナジーグループ ゼネラルマネージャー 
谷本 卓也

news_09.jpgパナソニック
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
小型二次電池事業部 充電システムビジネスユニット
マーケティンググループ クリエイティブチーム 担当課長
能見 拓男

news_10.jpgパナソニック
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
小型二次電池事業部 充電システムビジネスユニット
技術グループ 技術3チーム
チームリーダー 長島 健彰(左)
技術4チーム 主任 浦 登志一(右)