インドネシア:電気のない村に浮かび上がる「光の動物園」

2015.04.15 Field Report

インドネシアの西ティモールにあるソネ村に、世界中から集まった「動物」のデザインシェードとソーラーランタンを寄贈しました。村人たちと一緒に創りあげた点灯式では、幻想的な「光の動物園」が浮かび上がりました。

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世界中から集まった動物たち

こんにちは。"Cut Out the Darkness"プロジェクトの次田寿生です。

パナソニックは2015年2月、インドネシアの無電化地域で暮らす人々にソーラーランタン1,010台を寄贈しました。寄贈先は、再生可能エネルギーの導入を通じて地域支援に取り組む「IBEKA」と、革新的なテクノロジーや製品を途上国の人々に届ける「コペルニク」の2つのNPOです。2014年3月のスンバ島・セブ島への寄贈と、2015年1月のパナソニックがスポンサーであるガンバ大阪からの寄贈と合わせ、同国への累積寄贈台数は2,000台を越えました。

今回が初めての寄贈となるコペルニクは、煙を出さないバイオマス調理用コンロやシンプルな浄水器といった途上国の課題解決につながる製品を寄付と販売の仕組みを通じて届け、最も支援が届きにくい人々の生活向上と自立支援に取り組んでいます。

寄贈した1,010台のうち110台は、"Cut Out the Darkness"プロジェクトの人気投票で選ばれた動物のデザインが施されたシェードと一緒に、コペルニクを通じて西ティモールにあるソネ村に寄贈されました。プロジェクト参加者の思いをしっかりと現地の人々に届けるにはどうすればいいか......。コペルニクの現地パートナーとも相談を重ね、村の人たちと一緒に創る「光の動物園」を企画しました。

自然豊かな山の上で暮らすソネ村の人々

寄贈式前日、準備のために現地に向かいました。ソネ村は、西ティモール中部の町ケファメナムから、さらに1時間ほど車で走った先の山の上にあります。トウモロコシ畑を眺めつつデコボコ道を上がっていくと、そこには自然豊かで穏やかな光景が広がっていました。

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ケファメナムから1時間、緑豊かな自然のなかにあるソネ村。

村に入ると、あちこちから機織りの音が聞こえてきます。このあたりでは、昔ながらの伝統的な手法でつくりあげる織物が盛んです。しかし村には電気が通っておらず、女性たちは夜は仕事は出来ません。また、多くの家庭では照明としてケロシンランプを使っているため、火事や煙による健康被害などの危険と隣り合わせの生活をしています。

点灯式の会場では、ソーラーランタンをくくりつける木やロープとして使うツルの切り出しなど、村の人々が総出で準備をしてくれていました。点灯式を楽しみにしてくれている気持ちが伝わってきて、絶対に成功させたいという思いを新たにしました。唯一の気がかりは、天気です。季節は雨季のため、いつ雨に降られるかわかりません。「明日は晴れてくれ!」と祈りながら前日の準備を終えました。

伝統的な歓迎儀式から始まったセレモニー

その願いが通じたのでしょうか。当日は見事なまでの青空となりました。ソーラーランタンを車に積み、予定より少し早く村に到着すると、きらびやかな衣装で着飾った村人たちが出迎えてくれ、伝統的なスタイルで歓迎してくれました。何も知らされていなかったので、とてもうれしかったですね。

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きれいな刺繍で彩られた布を一人一人の首にかけて歓迎してくれました。

次は、私たちが村人のみなさんを喜ばせる番です。その後の寄贈式では、ソーラーランタンとシェードを一人ひとりに思いを込めて手渡しました。子どもたちは「あなたはどんなシェードだった?」と楽しそうに見せ合いっこしています。全員に行き渡ったところで、ソーラーランタンの使い方をていねいに説明し、デザインシェードを取り付けてもらいました。

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ソネ村の学校で行われた寄贈式の様子。一人ひとりにソーラーランタンを手渡しました。

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シェードの付け方を説明するコペルニクのスタッフ。

説明が終わると、みんなで夕方行われる点灯式の準備にとりかかります。村人たちは慣れた手つきで木とツルを組み立て、台が次々と完成していきます。シェード付ソーラーランタンを吊るしたら準備完了。みなさん楽しそうに参加してくれて、日が落ちる前に無事にすべてを終えることができました。あとは、あたりが暗くなるのを待つのみです。

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点灯式のために事前に準備をしておいた木々を運ぶ、ソネ村の男性陣

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村の人々と一緒にソーラーランタンを吊るす台を組み立てます。

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点灯の時を待つソーラーランタン

暗闇の中、浮かび上がった「光の動物園」

あたりが薄暗くなり、涼しい風が吹き始めた19時、いよいよ点灯式が始まりました。村人たちはどんな反応をしてくれるだろうか...ドキドキの瞬間です。

「点灯・・・1!2!3!!」

スタッフの合図で、110のソーラーランタンを一斉に点灯すると、そこには、ウサギやクマ、キリン、鳥など「光の動物園」が浮かび上がりました。村の人々からは大歓声があがり、子どもたちは飛び跳ねたり、じーっと自分の動物の明かりを見つめたり、とてもうれしそうでした。

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ランタンの明かりとともに浮かび上がった動物を見つめる村の子どもや女性たち。

こうして点灯式は大成功のうちに終わりました。点灯式を一緒に創りあげたことで、ただ寄贈して終わりではなく、村の人たちと一体感を感じることができたのが印象的でした。子どもたちにとっても、世界各地の人たちが描いてくれたシェードのデザインに触れることで、新しい世界が広がるきっかけになってくれたらと思います。コペルニクの現地コーディネーターJhon Gideon Aduさんからは、「ソーラーランタンの明かりのおかげで、仕事の効率があがり、家族団らんや夜勉強する時間が増えるので、村のみんなも喜んでいます。本当にありがとうございます」とうれしい言葉をいただきました。

それぞれの自宅に持ち帰られたソーラーランタンは、食事の準備や機織り、子どもたちの勉強にさっそく役立てられていました。

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「ソーラーランタンのおかげで夜の作業がはかどる」「子どもたちがたくさん勉強をできるようになる」「家族団らんの時間を増やせる」とさまざまな喜びの声をいただきました。

tsugita.jpgパナソニック株式会社
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次田 寿生