ベトナムへ初めての寄贈。数字では計り知れない人々の暮らしのために

2015.04.30 Field Report

2015年3月中旬、「ワールド・ビジョン・ベトナム」に630台のソーラーランタンを寄贈しました。ソーラーランタンは、ベトナム北部のディエンビエン省の電力事情が悪い地域で活用されます。ベトナムへの寄贈は、今回が初となります。

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現地からの声を受け、初めての寄贈へ

こんにちは。CSR・社会文化部の星亮です。
2015年3月中旬、ベトナムを訪問してきました。「ソーラーランタン10万台プロジェクト」の12ヵ国目の寄贈先として新しく加わったベトナムで、初めてソーラーランタンを寄贈するためです。

きっかけは、2013年夏にシンガポールで実施された社内会議にまでさかのぼります。本プロジェクトに関して私が発表を行った後、ベトナムの現地法人の社員からアプローチがあり、「ベトナムにも無電化村があるのでソーラーランタンを寄贈したい」とリクエストされたのです。

ベトナムへの寄贈は、当初考えていませんでした。なぜなら、国際エネルギー機関のデータによると、同国の電化率は96%で、周辺のカンボジアやミャンマーなどに比べて電力インフラが行き渡っているからです。しかし、依然350万人もの人が電気のない暮らしを送っており、調査の結果、特に山岳地帯を中心とした少数民族の人々がそうした状況に置かれていることがわかりました。必要としている方がいるかぎり、ソーラーランタンを届けたい。そう考え、寄贈を決めました。

寄贈先は、ベトナム北部にあるディエンビエン省の4地域です。寄贈先団体のワールド・ビジョン・ベトナムは、同地域において、教育や職業訓練の機会が少ない子どもや大人たちへの支援のほか、子どもや妊産婦への保健・衛生ケア、地元の行政担当や村の住民組織のリーダーなどのコミュニティ開発能力の向上支援を行っています。現地スタッフが支援先の地域に常駐し、バイクや徒歩でしかいけないような村々にも通っているとのことです。

学校や診療所での活用で、人々の暮らし向上へ

3月15日、ベトナムの首都ハノイから西北に約470キロ、飛行機で1時間、車なら十数時間もかかるディエンビエン省に到着しました。そこから、さらにでこぼこの山道を車で登ること約3時間、ようやくたどり着いたのが、ソーラーランタンが活用される村落のひとつ、プア・ディ・トン村です。

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目の前一面に広がるのどかな山村風景

道中、かなり山奥まで電線が通っているのを見かけましたが、山頂に近い家庭には届いていないところがありました。村によっては、小水力発電が整備されていますが、乾期には機能しなくなってしまうため、一年のうち数ヶ月しか電気が使えないそうです。

プア・ディ・トン村では、夜に寄贈行事が行われ、真っ暗闇の中、民族衣装を着た村の人々がたくさん集まってくれました。ソーラーランタンの使い方や用途などを説明しているときの、目を見開いて熱心に聞き入る人々の姿がとても印象的でした。

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ソーラーランタンの明かりの下、使い方の説明と、寄贈行事を行いました。

ソーラーランタンは、ワールド・ビジョン・ベトナムが展開している栄養教室や村の幼稚園、集会などで役立てられます。幼稚園の先生をしている女性は、これまでは明るさが十分でない上に煙により健康にも害がある灯油ランプを使って授業の準備をしていましたが、「ソーラーランタンによって、安全に明るく手元を照らすことができるようになる」と、とても喜んでくれていました。

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灯油ランプとソーラーランタンでは、明るさに雲泥の差があります。

翌日は、省都のディエンビエンフーで寄贈式典を行い、その後、ナム・チュア村で寄贈行事を行いました。

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ディエンビエン省人民委員会のトップ、郡当局の代表者、ワールド・ビジョン・ベトナムの現地担当者にも参加いただき行われた寄贈式典。

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ナム・チュア村ではソーラーランタンが使用される幼稚園と小学校で寄贈行事が行われました。

数字ではわからない埋もれたニーズに応えるために

今回、山岳地帯の奥深くにある村を2つ訪問して、ソーラーランタンのニーズは確かにあることがわかりました。統計上は電気の普及率が高くても、今回の訪問を通じて、数字では計れない人々の暮らしがあることを知りました。

近年、経済発展が著しく、都市部の発展は目覚ましいベトナム。政府は、この成長の恩恵を、地方の隅々まで届けられよう努力を続けていますが、それでも発展から取り残されがちな地域が多くあります。これからも現場の幅広いネットワークを有する組織や人々と連携し、綿密な調査、検証を行いながら、ソーラーランタンを本当に必要とする人々に届けていく活動を続けていきます。