必要とするすべての人々に明かりを届ける。インドでの取り組み

2015.12.17 News

農村向け製品「ソーラーLEDライト」の開発から約1年。インドでは、新たな製品の開発やリーチする手段の多様化など、より多くの人々に明かりを届けるための取り組みが進んでいます。開発チームの吉田明正さんにお話を聞きました。

より多くの層に届く製品を目指して

2014年11月、インドで農村地域向けに開発されたソーラーLEDライト「SL4」がリリースされました。無電化地域の人々への生活調査を繰り返して生まれたこの製品は、利用者からの評判も良く、日々の生活に重宝されているようです。

一方、販売開始から数カ月。まだまだ「高くて手が届かない」と感じている層も多くいる実情が見えてきました。そこで新たに誕生したのが、ソーラーLEDライト「SL7」です。2015年10月に販売を始めました。

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ソーラーLEDライト「SL4」(左)と「SL7」(右)

SL7の一番の特徴は、なんといってもその価格です。900ルピー(1650円程度)と、SL4の約3分の2。農村地域で暮らす人々が気軽に購入できる目安である1000ルピー以下に抑えることに徹底的にこだわりました。

価格を下げたからといって、性能を落としたわけではありません。携帯電話の充電機能はありませんが、壊れない丈夫さを維持し、防水性能や明るさはむしろSL4を上回っています。農家の人々は、夜に畑を荒らす動物や危険のある蛇を追い払うときに明かりを利用するため、持ち運びやすさも重視しています。

販売開始をしたばかりですが、「安いのに性能が良い」「とても明るい」と、利用者から喜びの声が届いています。

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日常生活の様々なシーンで活躍する「SL7」

家をまるごと照らす太陽光発電システム「SHS10」

そして、もう一つ、家全体を明るくしたいというニーズに対応した製品として、家庭用太陽光発電システム「SHS10」を開発しました。LEDランプが3つついたSHS10一台があれば、家中を明るく照らすことができます。バッテリーと各部屋などに設置した電球をケーブルでつなぎ、固定して使えるようになっています。

価格は、経済的に少し余裕がある層を対象に6000ルピーとソーラーLEDライトに比べて高めですが、貧しい人のためにマイクロファイナンスによる分割払いもできます。また、新たにスマートフォンやタブレットの充電機能も加えました。近年、教育現場でタブレットを支給する例も増えており、学校や公共施設での使用も想定しています。

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家庭用太陽光発電システム「SHS10」

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1台で家全体を明るく照らします

ソーシャルエンタープライズや郵便局と提携

人々に明かりを届けていくにあたっては、農村地域にネットワークを持ち、事業を通じて社会課題の解決に取り組むソーシャルエンタープライズ(社会的企業)と連携しています。

たとえばマハラシュトラ州では、政府系のソーシャルエンタープライズ「MAVIM」と提携した取り組みが始まっています。MAVIMは、女性の地位向上や雇用促進を支援する団体で、7万8000人の農村女性たちが「セルフヘルプグループ」と呼ばれる自助組織に参加しています。農村地域では、明かりとして使用しているケロシンランプの有害性を理解していない人が多いため、女性たちと協力し紙芝居による啓発活動を行うほか、ソーラーLEDライトなどを販売してもらうことで収入向上にもつなげています。9月からスタートしたこの活動は、今や州全体に広がりつつあります。

また、12月下旬からは、郵便局でデモンストレーションしながら販売する取り組みを始めています。都市から農村の奥地までインド全土に15万以上ある郵便局との連携は、これまで届かなかった層に届けていくうえで、大きなインパクトをもたらすと思います。

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ソーラーLEDライトが女性たちの未来を照らす希望の光となります

人々の生活向上につなげていくために

近年、インドでは政府の対策により無電化の地域は減ってきています。しかし各家庭までは電気が届いておらず、停電も頻発するなど、人々の生活向上には必ずしも結びついていないのが現状です。一方、電気はなくても携帯電話は普及しており、最近は格安スマートフォンも広がるなど、人々の生活状況は急速に変化しています。

これらソーラーLEDライトはただ明るければよいというものではありません。実際に使ってもらい、真に人々の生活向上につながっていくものである必要があります。そのためにも、急速に変わる現地の多様な実情を正確にとらえて製品開発に反映していくほか、必要とする人々に届けていくために外部のパートナーやソーラーランタン10万台プロジェクトを通じた寄贈活動と連携していくなど、多様な取り組みをこれからも進めていきます。

インドで展開するソーラーLEDライトの紹介ムービー