バングラデシュへ初めての寄贈。無電化村の子どもたちを支援

2016.07.20 Field Report

急成長を遂げる一方、貧富の格差が激しいバングラデシュで、2016年3月に760台のソーラーランタンを初めて寄贈しました。現地で活動するNGOを通じて、農村や路上で暮らす子どもたちを照らしていきます。

急速な経済成長に遅れをとる電力事情

日本の4割ほどの国土に、約1億5940万人が暮らすバングラデシュ。都市部への人の移動が著しく、世界で最も人口密度の高い国の一つです。そして、豊富な労働力と潜在的な市場規模が注目され、急速な経済成長を遂げています。

一方、全人口の約半数を占める農村部の人々の生活は貧しく、教育やインフラなどあらゆる面で都市部と農村部の格差が広がっています。河川の多いこの国では、洪水などの被害に度々みまわれ、農業に従事する人々の暮らしは、災害に対してとても脆弱です。

20160622_WVB_1.jpg

首都ダッカの中心部の様子

そんなバングラデシュの電化率は55%。特に農村部では電気が通っていない地域が多く、夜になると辺り一面、真っ暗な闇に包まれてしまいます。

電化率の向上を目指し、発電燃料の約7割を占める天然ガスの開発や液化天然ガス・石炭の輸入などを通じて、政府は発電容量の増強を目指していますが、急速な成長に追いついていないのが現状です。電力料金の値上げなど人々の生活への影響も懸念されています。

農村の闇を照らすソーラーランタンの光

昨年7月に首都ダッカを訪問し、16の企業やNGOと面会して現地のより詳しい状況やソーラーランタンのニーズについて調査を行いました。その結果をもとに、今回、農村地域の子どもたちの支援や衛生教育、貧富の格差解消などに取り組む4つのNGOに760台のソーラーランタンを寄贈しました。バングラデシュへの寄贈は今回が初となります。

エクマットラは、2004年から首都ダッカを中心に、路上で生活する子どもたちに対する青空教室の開催や衣食住を提供する"シェルターホーム"の運営を続けています。また、バングラデシュでは珍しい焼き鳥屋をオープンするなど、子どもたちが自立できるようサポートしています。ソーラーランタンは、この春に開校予定の「エクマットラ・アカデミー」で活用されます。

20160622_WVB_2.jpg

ソーラーランタンに興味津々の子どもたち

もう一つの寄贈先は、首都ダッカから船で6時間の距離にあるハムチャー村で、大学受験に特化した教育を展開するe-Educationです。教員が不足する農村部の高校生たちに、都市部の予備校講師の授業映像を提供しており、なかにはダッカ国立大学に合格した生徒もいるそうです。電気が通っていない農村部では、夜の勉強時間が限られてしまうため、映像授業を積極的に受講してきた生徒にソーラーランタンを提供します。

また、北部を中心とする5つの農村で地域開発プログラムを展開するワールド・ビジョン・バングラデシュは、子どもや大人たちの教育支援をはじめ、生計向上に向けたクラフト雑貨の製作・販売や母子保健など多方面で人々の暮らしをサポートしています。ソーラーランタンは、農村地域に暮らす貧しい子どもたちの教育の質を改善するために活用されます。

貧富の格差が激しいバングラデシュでは、子どもたちに対する教育のほかにも様々な課題があります。たとえば、首都を中心とした過密な人口問題は、トイレの不足や野外排泄といった衛生上の課題を引き起こしています。そこで、地域の人々が主体的に参加する衛生教育の推進やトイレの設置などの活動を続ける現地NGOのNijera Cottage and Village Industriesにもソーラーランタンを配布しました。

20160622_WVB_3.jpg

シェルターハウスで暮らす子どもたちと記念撮影。エクマットラにて。

社会問題に挑む組織や個人とともに

今回が初となるバングラデシュでのソーラーランタンの寄贈は、一時的なモノの支援ではなく、同国に内在する様々な社会課題に対して積極的にアプローチしていくための第一歩です。

バングラデシュでは、社会的に意義のある活動を続けるNGOが、強い発言力を持ち、企業や行政などと同等の高いプレゼンスを発揮する場面が多く見られます。今回の寄贈をきっかけに、社会の深刻な課題に挑み続ける組織や個人との協力関係を深め、さらに多くの人へ、ソーラーランタンの明かりを届けていく予定です。