インドネシア・フローレス島で寄贈後の状況を視察

2017.03.10 Field Report

2016年3月、現地で活動するNGOやソーシャルエンタープライズを通じてインドネシアのフローレス島にある2つの無電化地域にソーラーランタンを寄贈しました。現地を訪問し、ソーラーランタンの活用方法や、明かりで変化した村人の暮らしの様子を視察してきました。

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寄贈から1年。フローレス島を視察しました

こんにちは。CSR・社会文化部の奥田です。

バリ島から飛行機で東に約1時間半行ったところに、フローレス島はあります。空港に到着後、向かったのは、現地語で"ラブアンバジョ"と呼ばれる港町。世界最大のトカゲ、コモドドラゴンの生息地で、ユネスコの世界遺産に登録されているコモド国立公園からボートで2時間のところに位置しています。

昨年、現地のソーシャルエンタープライズ、ティナミトラを通じて、コモド地域を中心に13の村にソーラーランタンを寄贈しました。ティナミトラは、コモドなど3つの地域で、安価な水の提供や天然ガスの普及などさまざまなソーシャルビジネスを展開し、インフラの整備が行き届いていない村の人々の生活を支えています。

今回訪れたパシールパンジャン管理村は、リンチャ村、ケロラ村、ククサン村という3つの村で構成されており、約400世帯が暮らしています。電力会社からの電気の供給がまったくない無電化地域で、ソーラーランタンが寄贈されるまでは、夜はジェネレーターを使って明かりを灯していました。

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灯油ランプの明かりだけを頼りに暗闇の中で料理をする女性

灯油ランプに代わるソーラーランタンの底力

ティナミトラを通じて、村内の家庭や教会、ヘルスセンター、学校、モスク、集会所などに届けられたソーラーランタンは、今、それぞれの場所でどのように使われているのでしょうか。

リンチャ村にあるヘルスセンターの診療時間はこれまで午前8時から午後3時まででした。夜間も緊急の場合は対応していましたが、患者は灯油ランプの明かりを持参しなければなりません。当然、明るさも不十分です。「ヘルスセンターにソーラーランタンが設置されてからは、夜間でもより多くの患者や妊婦を明るい部屋で診療できる」と医師や看護師たちは口々に答えてくれました。

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ヘルスセンターの壁に設置されていたソーラーランタン

学校の学習環境も改善され、子どもたちの学ぶ意欲も高まっているようです。寄贈前、子どもたちが机に向かえるのは、昼間の限られた時間帯だけでした。今では進級試験に向けて学校が夜間も開講されるようになり、たくさんの子どもたちが集まっています。やる気のある生徒に向けて金曜日の夜に実施される補習も、それまでは参加するためには灯油ランプの燃料代を支払わなければなりませんでしたが、ソーラーランタンの明るい光の下、無料で実施できるようになりました。

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(左)進級試験に向けて夜間講習に参加する生徒
(右)リンチャ村のモスクでは、夜間にコーランを読む人の姿も

寄贈をきっかけに、電気の供給がスタート

次に向かったのは、フローレス島東部のイレブラ村です。村への到着は予定より4時間も遅れ、夜10時頃になってしまいましたが、ソーラーランタンの明かりを掲げた村の人たちに盛大に迎えられ、すぐに歓迎の式典が始まりました。

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夜間にもかかわらず盛大に開かれた歓迎式典

寄贈先団体のIndonesia Midwives Association(IMA)は、インドネシア全体で33万5,000人いると言われる助産師の資格を付与する組織です。緊急時に隣町から救急車を配備したり、助産師同士の応援体制や情報共有の仕組みを整えたりすることで、地域全体で妊婦さんを支えています。今回はとくに、東フローレス地区で活動する助産師にソーラーランタンが配布されていました。

ソーラーランタンが寄贈されたフローレス島東部にあるイレブラ村は、周辺の村のなかでも電力供給量が極端に少なく、送電網はあるものの電力の供給は0%。人々は、日が落ちると何もできない不便な生活を強いられていました。

東フローレスの伝統織布「イカット織」で生計を立てている女性は、以前は灯油ランプの燃料代を支払うことができず、早朝や昼間にしか作業ができなかったそうですが、ソーラーランタンによって、夜の作業もできるようになったそうです。一家の大黒柱である漁師の男性も夜間に網の修復が可能になってから、翌朝の漁がはかどるようになったと喜んでいました。

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(左)アジアを代表する伝統織布「イカット織」に精を出す女性
(右)明かりの下、網の修復に熱心な漁師

また、子どもたちのために寺子屋を開き、夜間の補講をサポートする元教師の女性は、「灯油代が不要になり、ありがたい」と笑顔を見せてくれました。

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明るい光の下、寺子屋を積極的に利用する子どもたちが急増中

そして、ソーラーランタンが一人ひとりの生活を変えただけでなく、村全体にも大きな影響を及ぼしていたこともわかりました。寄贈によって、政府が村に注目するようになり、それまで全く供給されていなかった電気が、2日に1度、供給されるようになったそうです。「政府が村の存在を認めてくれた」と村人たちも喜んでいました。

本プロジェクトでは、「寄贈したらそれで終わり」ではなく、届けた明かりの活用状況を確認するため、できるかぎり寄贈先を訪問するようにしています。今回の視察によって、人々の暮らしが良い方向へ変わっているのを実際に確認することができました。今後も、現地の人々の暮らしに精通するNPOや地域の人々の声に耳を傾けながら、必要としている人のもとにソーラーランタンを届けていきたいと思います。