インドネシアに広がるソーラーランタンの明かり スンバ島寄贈レポート

2014.04.01 Field Report

明かりを必要とする少しでも多くの人たちにソーラーランタンを届けたい―そうした想いから、新たにインドネシアでの寄贈がスタートしました。3月上旬、寄贈する1000台のうち、最初の111台を届けに、スンバ島を訪ねました。

sumba_0.jpg

こんにちは。CSR・社会文化グループの奥田です。

ソーラーランタン10万台プロジェクトの寄贈先に新たにインドネシアが加わることになりました。カンボジア、インド、ミャンマー、ケニア、フィリピンに続き6カ国目です。明かりを必要とする人たちは、世界で約13億人。無電化地域に暮らす人々の生活向上に向け、寄贈地域を広げながら、パナソニックは明かりを必要とする人にソーラーランタンを届けていきます。

インドネシアでは、再生可能エネルギーの導入を通じた持続的な地域支援に取り組む現地NGOのIBEKAと協力し、同国東部に位置するスンバ島とサブ島に1000台を寄贈します。 寄贈第一弾として111組のソーラーランタンとCut Out the Darknessに寄せられたデザインを元に製作されたランタンシェードを届けに、3月上旬にスンバ島に向かいました。

独自の文化が根付くスンバ島

リゾートで有名なバリから東に飛行機で1時間半のところに、スンバ島は位置します。島西部は雨が多く気候も穏やかですが、寄贈先の村がある東部はオーストラリアの気候の影響を受け、乾燥した草原地帯が広がります。過剰伐採や過放牧、野焼きの影響もあり、島の森林被覆率は10%程度に過ぎません。 また、スンバ島はインドネシアの中でも貧困層や栄養不足の子どもの比率が特に高い地域で、島の半分以上の人が電気にアクセスできません。

sumba_1.jpg

イスラム教徒が約9割を占めるインドネシアですが、スンバ島では祖先の霊を崇める土着信仰のマラプ教が根付いており、ウマ・マラブ(祖先の霊の家の意味)と呼ばれる家があちらこちらにあります。特徴的なとんがり屋根の部分に祖先の霊が宿るとされています。

sumba_2.jpg

ソンケットやイカットと呼ばれる伝統的な織物。その文様の緻密さ・美しさは世界的に有名です。

スンバ島の県都ワインガプから車で走ること2時間。カマンギ村付近の集落が今回の寄贈先です。集落までの道は想像以上の悪路で、途中パンクすること2回。一番遠い集落に辿り着くには、切り立った尾根沿いにさらに2時間ほどかかります。

この地域の集落の人々の暮らしは、ほぼ自給自足。人々は、畑に適した限られた土地を耕しながら、自然のリズムに合わせ1日1日を生きています。送電網はもちろん整備されていません。

sumba_3.jpg

一番遠い村まで片道4時間の道のり。4日をかけて4つの集落を周りました。

再生可能エネルギーを導入して地域支援に取り組むIBEKA

寄贈パートナーであるIBEKAとの接点は、パナソニックの社員が新興国に滞在しながら、現地で活動するNGOと一緒にボランティアで課題解決に取り組むプログラムPIVoTに遡ります。

IBEKAは、小水力発電や風力といった再生可能エネルギーの導入を通じて、エネルギー課題の解決と地域活性化に取り組んでいます。設備をただ建設して終わりではなく、ワークショップを重ねて地域の主体性を引き出しながら、住民たち自らで発電したエネルギーの使用方法を決定し、維持管理を行っていけるようサポートします。時間はかかりますが、まさに持続的な支援のあり方だと感じます。

しかしこのようにして生まれた電気を享受できるのは、まだまだ島民のほんの一部に過ぎません。そこで私たちはIBEKAと協力して、電気へのアクセスが特に進んでいない集落にソーラーランタンを寄贈することにしました。

sumba_12.jpg

寄贈地域付近の集落でもIBEKAによって小水力発電が設置され、300世帯以上に電力を供給しています。

4つの集落に111台を寄贈

訪れた集落では、どこも多くの村人たちが私たちを待ち構えてくれていました。各集落で寄贈式が行われ、ソーラーランタン一台一台を手渡しで村人たちに渡していきます。

寄贈家庭の選定にあたっては、IBEKAのメンバーが一軒ずつ訪問し、この先10年間は送電線が敷設されないと見込まれる地域に住み、特に経済的余裕のない家庭を寄贈の対象としました。

人々の夜の明かりはケロシンランプですが、板を簡単に組み合わせただけの高床式の家は隙間風が多いため、風が吹くと炎が揺れて使えません。ソーラーランタンを受け取った年配の女性は「これなら風があっても使える。すごい!」ととても喜んでくれました。

sumba_5.jpg

左から集落の長、元王族の血をひく地域の有力者であるウンブさん、IBEKAのスタッフ。寄贈先の調整に尽力いただきました。

sumba_6.jpg

現地販売法人のパナソニック・ゴーベル・インドネシア(PGI)のCSR担当Muaraと私奥田から、今回の寄贈の主旨とソーラーランタンの使い方を説明しました。

sumba_7.jpg

ソーラーランタンとCut Out the Darknessで皆さまから寄せられたデザインを元に製作したシェードを寄贈しました。

日が暮れてから、寄贈先の家庭を訪ねてみたところ、どの家でも早速ソーラーランタンを使ってくれていました。食事を作っている家。仕事をしている家。子どもが勉強をしている家。それぞれの暮らしでソーラーランタンが活躍していました。

sumba_8.jpg

ソーラーランタンは広い部屋全体を照らすにも十分な明るさがあります。手元が明るくなり、作業がはかどると好評でした。

明かりを通じて、人々の主体的な未来づくりをサポートする

昔ながらの暮らしを営んでいる人々に新しいテクノロジーを寄贈する際には、それが人々の生活にどのような意味を持つのか、押しつけになっていないか、地域と対話をしながらしっかり考える必要があります。

今回寄贈した集落の出身で、IBEKAのスタッフであるPetrus Lamba Awangさんは、寄贈について、このように話してくれました。

「人々は必要に迫られてケロシンランプを利用していますが、その煙は人々の健康を蝕んでいます。また燃料のケロシンは近年、価格上昇によりガソリンより高くなっています。ソーラーランタンはその貴重な代替となりえます。燃料費による経済的負担もぐっと軽くなり、教育などにお金をまわすことができるようになります」

この地域の人々が抱える課題に対し、私たちは明かりという小さなきっかけを提供することで、人々が主体的に未来を創っていく手助けをしていきたいと考えています。

ソーラーランタンの寄贈が、今後スンバ島の人々の生活にどのような変化をもたらすのか、IBEKAと一緒に見守っていきます。

sumba_9.jpg

使用した感想を聞くために、寄贈先の家庭を訪ねて回りました。寄贈は終わりではなく、始まりです。人々が本当に必要しているものを提供できるよう、これからも取り組んでいきます。

※ここでご紹介しているソーラーランタンBG-BL03は国内では販売しておりません。