フィリピン:無電化・無医村の健康を守る、ソーラーランタンの明かり

2016.02.13 Field Report

2015年9月、フィリピン・ルソン島リサール州タナイ町にある先住民族のバランガイ(村)を訪ねました。ここでは「代替医療総合医学センター(INAM)」が地域の保健医療を支援しています。電気がなく、医者もいない村では、ソーラーランタンの明かりが日中暗い屋内での診療に役立っています。

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貧しい地域の健康づくりをサポートするINAM

代替医療総合医学センター(INAM)は、地域と連携し、貧しくて医者に通えない人々や、無医村に住む人々が統合保健医療サービスを利用できるように活動を行っています。具体的には、地元で採れる薬草を利用したハーバルメディスンや自然療法、針灸などの伝統的な治療法を用いた統合医療サービスを提供するほか、基本医療技術の研修を行っています。これによって低価格な治療が可能となり、これまで医者にかかることができなかった都市部や農村部の貧しい人々も質の高い医療サービスを受けられるようになります。

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マニラのケソン市にあるINAM本部の様子。貧しくて治療を受けられない人々を診察しています。

またINAMは、無医村に保健医療サービスを提供するため、住民参加型の保健活動にも力を入れており、看護師や助産師、村の中で選ばれたボランティアのコミュニティ・ヘルス・ワーカーに研修を行って地域医療を担う人材を育成しています。研修内容は、伝統療法や救急法だけでなく、住民の組織化、コミュニティ・ヘルス・ワーカーへの研修、地域医療プログラムの運用など多岐にわたっています。コミュニティ・ヘルス・ワーカーは、地域の問題を発掘して記録を取る方法や、患者を医療従事者や医療施設に連携する方法などを教わります。

村での診察が、容易にできるように

今回ソーラーランタンを寄贈したフィリピン・ルソン島リサール州タナイ町ライバンにあるマガタ村とマンガハン村は、マニラ首都圏から東の山間部にある先住民族が住む人口数百人の無電化の村です。首都圏から少し離れただけなのに、電気が通っていない貧しい地域があることに驚きました。家のつくりも簡素で、強風で屋根が飛ばされたり、雨漏りしたりすることが頻繁にあるそうです。

ソーラーランタンは、診療所や、各家庭をまわる訪問医療で活用されていました。

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診療所での妊婦健診で利用されているソーラーランタン。

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夕方以降に家庭を訪問時にはあたりが真っ暗に。ソーラーランタンが大きな手助けになります。

診療所のない村では、コミュニティ・ヘルス・ワーカーが各家庭を訪問し、新生児や子どもの体重測定、患者の体温や血圧のチェック、ハーブなど薬草の処方、包帯などを使った傷の手当てなどをおこなっています。屋内は日中でも暗いため、ソーラーランタンがさまざまな場面で活躍します。

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患者の家庭を訪れ、血圧を測定するコミュニティ・ヘルス・ワーカー。

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ソーラーランタンの明かりで、体重計の数値が正確に読めるようになりました。

ソーラーランタンで、笑顔を増やしたい

今回訪ねた2つの村は、手漕ぎの船で川を渡って山を登り、やっと辿りつくような山奥にある村でした。先住民のコミュニティの多くがこのような山の中に点在しており、医者がいません。こうした地域では、コミュニティ・ヘルス・ワーカーをはじめとする地域医療を担う人材が必要不可欠です。

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山奥の村に行くためには、車や船、徒歩で川を何度も渡らなければなりません。

明かりは、そうした人々が円滑に活動を行う上での基盤となります。今後もソーラーランタンの寄贈を通じて、地域医療を担う人々を支え、多くの人々の健康と笑顔を作るお手伝いに取り組んでいきたいと思います。