ミャンマーの未来をつくる寺子屋支援:メコン総合研究所

2013.10.01 Our Partners

ミャンマーでは、貧しい子どもたちが通う寺子屋で、ソーラーランタンが活用されています。寺子屋の建設や運営支援をおこなっているメコン総合研究所の副所長・岩城良生さんに、これまでの成果と今後の活用の可能性をうかがいました。(対談日:2013年7月16日)

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寺子屋支援に力を入れているメコン総合研究所

岩城 : NPO法人メコン総合研究所(以下、GMI)は、2006年11月にメコン地域の若者の未来を応援するために設立された団体です。特に、公立学校に通えない子どもたちのためにお寺が運営している"寺子屋"の支援を中心に活動しています。寺子屋はミャンマー全体で2000ヶ所ほどありますが、屋根があるだけの吹きさらしの教室だったり、お坊さんの生活スペースの一部を教室として使っていたりなど、設備は立派なものとはいえません。そこでGMIは、校舎の建設をし、必要な運営サポートを継続的に行なっています。7年間で校舎を20校、建設しました。

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左: GMIが支援している寺子屋 / 右: 寺子屋の授業風景

尼寺子屋で活用されるランタン

: 今現在の配布状況はどのようになっているのでしょうか。

岩城 : 5月25、26日に、GMIの名誉顧問で現首相夫人の安倍昭恵さんがミャンマーを訪問しました。その際に贈呈式を行ない、2ヶ所の尼寺子屋に配布しました。住み込みの尼さんが多いので、夜、勉強するときに使っていただいています。また、ひとつの尼寺子屋では縫製の仕事を請け負っているので、その作業時に使うことも考えているようです。残りの寺子屋への配布は8月中には完了する予定です。

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安倍昭恵さんから尼寺子屋への贈呈式。

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夜間や停電時の勉強用に活用されています。

公立学校と寺子屋、2つの教育課程があるミャンマー

: 近年の経済的、政治的情勢の変化を受けて、急激に成長しているミャンマーですが、一方で貧困層は多く、様々な課題があるかと思います。寺子屋に関しては、どのような現状にあるのでしょうか。

岩城 : ミャンマーは今、公立教育と寺子屋教育という2つの教育課程があります。他の国と違うのは、寺子屋教育も正式な教育として政府に認められていて、テキストやカリキュラムも、公立学校とまったく同じだということです。

: なぜ公立学校と寺子屋が同時に存在するのですか?

岩城 : 公立学校は、授業料はそれほどかからないのですが、制服代や机・イス代、寄付金などのお金がかかります。それすら払えないという家庭が多いのです。もうひとつの決定的な問題は、お弁当を持っていかなくてはならないことです。貧しい家庭は、午前中に働いて得たお金でようやく食事をとることができる場合が多いため、朝、子どもにお弁当を持たせることができません。一方、寺子屋では給食が無償で配給されるため、寺子屋に通いたい子どもたちが殺到し、つねに寺子屋が足りない状態にあるのです。

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: 寺子屋の運営資金はどのようにまかなわれているのですか?

岩城 : 公立学校のように政府からの援助はなく、お寺への寄付金を元に運営されています。そのため、厳しい経営状態におかれている寺子屋が多く、特に日雇い労働者が多い都市部では寄付が少なく、状況は深刻なようです。

: でも寺子屋があるおかげで、他の発展途上国と比べても教育は充実していますし、識字率も90%以上と高いですよね。そこはミャンマーのすばらしいところですね。

岩城 : そうですね。お寺が運営していますから、道徳教育をしっかり教えています。子どもたちもすごく強くて明るくて、貧しいことを感じさせません。

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熱心に勉強に取り組む子どもたち。

ソーラーランタンのレンタル収入を得ることで寺子屋運営の安定を

岩城 : 寄贈のお話をいただいた際、ソーラーランタンは、ミャンマーだと公務員の給料1ヶ月分ぐらいする高価なもので、一般家庭に無料で配布すると転売されてしまうかもしれない、とお伝えしました。そこで、寺子屋の現場で活用させていただくこと、またその一部は、各寺子屋で管理してレンタル事業に使わせていただけないかと提案しました。寄付が少なく、教師の給料が払えないという問題に直面している寺子屋も多いので、レンタル収入を得ることで、寺子屋が安定して運営できるよう、貢献できればと思いました。他の事例で、バッテリーをレンタルする事業を行なっている寺子屋があり、日本円で月5万円程度の収入を得ているそうです。非常に興味深い取り組みで、同じような仕組みが作れないかと思いました。

: バッテリーのレンタル事業については、私も視察の際に話を聞きました。お寺のお坊さんがビジネスマインドをお持ちだということが、印象深かったですね。

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ランタンを活用したモデル事業の仕組み

岩城 : ランタンをレンタルすることで寺小屋運営資金を得るモデル事業の仕組みとしては、ランタンひとつにつき、1日20円という価格設定を設けました。ただ、別のNGO団体が似たような事業をすでに行なっていて、価格設定が高いため参加が難しいという意見も出ています。でも、使っていただければパナソニック製品の性能のよさは一目瞭然ですし、USBケーブル付きで携帯電話の充電ができること、そして何より、寺子屋への寄付になるので、少し高い価格設定であっても協力してもらえるようお願いしてくださいと伝えています。そういえば、このランタンのことを知った地元企業から、購入したいという話も出ているようですよ。

: それは嬉しいですね。我々は企業市民活動(社会貢献活動)担当部門ですので、ランタンを本当に買うことができないような貧しい人が直面しているさまざまな課題の解決にお役立ていただけるよう、パートナー団体に寄贈させていただいています。企業としては、それとともに、購入する余裕のある方々にランタンをお買い上げいただくという形が、ベストだと思っています。そのためにもできるだけお買い上げいただけるような価格にしていくことが求められていると思います。

寄贈してからがスタート

岩城 : GMIとしては、寄贈して終わりではなく、それを継続していき、しかも循環できるものにしたいと思っています。私たちの寺子屋事業も、ハードを作って終わりではなく、そこからがスタート。関わっている人全員が責任をもって参加していただきたいと思います。

: 我々も、ランタンを使っていかに暮らしが良くなっていったか、そのインパクトを是非一緒に見届けたいです。そして、暮らしの改善には、人々のオーナーシップといいますか、自らが主体となって良くしていこうと努力することが非常に重要であると私も考えています。ミャンマーの方々が有効に活用されることを信じています。

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