官民パートナーシップの役割と期待:UNDP駐日代表事務所

2018.01.26 Our Partners

国連開発計画(UNDP)の皆様には、プロジェクト開始当初からご協力いただき、特に、アフリカ諸国でソーラーランタンを寄贈する際、大きな力になっていただきました。UNDP駐日代表事務所の石田ともみさんと、これまでの取り組みを振り返りながら、ソーラーランタン10万台プロジェクトの意義とこれからについて語りました。(対談日:2017年9月13日)

201801_UNDP_1.jpg

写真左から浅野明子(パナソニック)、石田ともみさん(駐日代表事務所)、砂田菜実子(パナソニック)

「今まで入れなかった地域に寄贈できたのは、UNDPのおかげです」

砂田 : UNDPさんとの接点は、2011年4月、タンザニアのムボラ村へのライフイノベーションコンテナとソーラーランタンの寄贈が最初でしたね。その翌年、ソーラーランタン10万台プロジェクトがスタートし、2014年にリベリア、ギニア、シエラレオネ、2015年にケニア、2016年はコンゴ民主共和国と毎年寄贈にご協力いただいてきました。そして2017年度もタンザニア、ナイジェリア、カメルーン、ガイアナへの寄贈では、本当にお世話になりました。

浅野 : アフリカは、弊社の工場があるタンザニア以外はしっかりとしたネットワークがなく、輸送の難しさもあり寄贈のハードルが高く苦労していました。そんな時に、UNDPの皆さんとお会いする機会に恵まれ、私たちだけでは入ることができなかった地域にソーラーランタンを届けることができました。多大なるご支援をいただき、本当に感謝の一言です。ありがとうございました。

201801_UNDP_2.jpg

石田 : ソーラーランタン10万台プロジェクトのように長期に渡る民間のプロジェクトは珍しいですよね。しかも1つの国に1万台ずつ、10カ国にというわけではなく、自分たちで寄贈先を調べ、数百台ずつ寄贈しながら関係を築き、合計10万台を寄贈するという取り組みは他に例を見ません。個人ではなくコミュニティや仕事場、学校を中心に寄贈されているので、受益者はその数十倍になるのではないでしょうか。

インフラとしての"あかり"の重要性

石田 : UNDPはおよそ170ヵ国で活動しており、通常、民間の方たちが入りにくい現場にも国連機関として入っています。保健、職業訓練、環境保全、人道支援、文化保護などのプロジェクトでソーラーランタンを活用させていただきましたが、あかりはさまざまな用途でニーズがあり、その重要性を再確認しました。

201801_UNDP_3.jpg

浅野 : 寄贈先の用途としては、教育、保健、自立、経済などの問題解決に特に力を入れています。たとえば無電化地域の子どもたちは夜、灯油ランプの薄暗いあかりを頼りに何とか勉強をしているのですが、ソーラーランタンを使い始めたことで集中して取り組めるようになり、成績が上がったという話はよく聞きます。勉強ができることは子どもたちの自信となり、高等教育への進学、安定した就職と、貧困を抜け出す道につながります。

その他にも、助産師さんがソーラーランタンを使うことで安全な環境で出産できるようになる、夜間に女性がトイレに行く際の危険が軽減される、灯油ランプの煙による健康被害がなくなるなど、さまざまな効果が期待できます。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)で言えば、「再生可能エネルギー(目標7)」を使ったソーラーランタンの寄贈を通じ、「健康な生活(目標3)」「質の高い教育(目標4)」「ジェンダー平等(目標5)」の実現に寄与し、「貧困の根絶(目標1)」に貢献することを目指しています。

201801_UNDP_4.jpg

石田 : ソーラーランタンはあかりを通じて複数の目標解決につながる包括的なアプローチができますよね。パートナーと協働して何かを成し遂げる、という点では「パートナーシップで目標を達成しよう(目標17)」にもつながると思います。

浅野 : そうですね。実際、パートナーとなる寄贈先団体を探すにはかなりの時間と労力が必要です。実際に現地に行き、担当者に会い、寄贈を決め、報告がしっかりしている団体なら2年目にさらに多く寄贈して...というプロセスを実直に続けて関係を築いてきました。

石田 : 寄付先のパートナー開拓から、寄付先の現地視察など現場の声を聞きながら実施されていると伺いました。多様なステークホルダーと新しい形の関係性をつくっていくなかで、一企業だけで活動していたのでは持てない多様な視点が御社のチームには蓄積されていると思います。また、そうした活動のインパクトをウェブサイトで発信している点も素晴らしいです。一方で、効果をどのように数値化するかという点には、さまざまな難しさがありますよね。有効なデータを集められるよう、調査設計や体制づくりに工夫が必要になってきます。

浅野 : そのとおりです。本当はすべての現場に入り込み結果を追っていきたいのですが、それは難しいので、現在は寄贈先団体の協力をいただきながら定量的な効果の把握にも取り組んでいます。ただ正直な話、「役立っている」「ありがたい」との言葉をいただけるのですが、なかなか具体的な数字が集まらず、難しいですね。数字ありきではないですが、一方で活動を発展させるためには数字が必要ということもこのプロジェクトで学びました。今後の活動にぜひ活かしていきたいです。

201801_UNDP_5.jpg

「三方よし」の日本企業への期待

石田 : 日本の民間企業に国連およびUNDPはとても期待しています。その理由の1つが、日本企業が理念として持つ、売り手と買い手がともに満足し、また社会にも貢献するのがよい商売であるという「三方よし」の考え方です。そして、製品を通じて伝わる日本の技術力、おもてなし精神も高く評価されています。こうした日本の企業精神をパナソニックさんはまさに体現されています。自社だけでなく世界中の長期的な繁栄を考えているところがリーディングカンパニーならではだと思いました。

浅野 : そのように仰っていただき、ありがとうございます。ソーラーランタンは吊るすことができたり、持ちやすい形にしてあったり、立てかけることができたりと日本らしい「おもてなしポイント」がたくさんあります(笑)。現地の方からも「長持ちするし、簡単で使いやすい」と好評です。

201801_UNDP_6.jpg

本当にあかりを必要としている人にお届けすることで社会の発展に貢献したい。それが私たちの根底にある想いです。寄贈したコミュニティの人びとが製品を実際に使ってその良さを実感していただくという体験が、将来のビジネスチャンスにつながる可能性もあります。そういう意味では、会社の先兵的な役割も担っていると感じています。

石田 : 日本の質の高い技術、製品、人材をもって課題解決に取り組みながら、企業にとっても持続可能なかたちでパートナーシップを組む。こうした役割への期待が、前回の対談の時以上に高まっています。

ソーラーランタン10万台プロジェクトのその先へ

石田 : ソーラーランタン10万台プロジェクトの目標達成後は、どのようなことを考えられているのでしょうか?

浅野 : 未来を生きる人たちのために今何ができるかを考え、日々心豊かに暮らせる人が1人でも多くなる社会づくりに貢献できれば、と思います。

具体的には「あかりを通じた貢献」という点を引き継ぎながら、今後はソーラーランタンを含む当社の無電化ソリューション商材も活用し、単なる寄付で終わらせない活動に取り組みたいです。ただ物を手にするだけでは、壊れたらそれで終わってしまいます。そうならないよう、自分たちでメンテナンスできるようになる、資金を得ることができる仕組みを作るなど、地域の持続的発展につながる貢献をしていきたいです。UNDPさんはこうした分野の先駆者ですので、引き続きアドバイスをいただけると大変助かりますし、励みになります。今後もよろしくお願いします。

石田 : SDGsの達成に向けて、民間企業を含むさまざまなステークホルダーが活動を始めていますが、今までのプロジェクトで培ったパートナーシップを活かした活躍が期待されていると思います。今後もさまざまな局面でぜひご一緒できると嬉しいです。

201801_UNDP_7.jpg