カンボジア:ランタンの明かりが支える女性の自立

2013.10.01 Field Report

人身売買や農村の貧困問題に取り組む「かものはしプロジェクト」に寄贈したソーラーランタンは、女性たちの自立を支えるコミュニティファクトリーの照明や手元灯として活躍していました。

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こんにちは。CSR・社会文化グループの星亮です。

2012年3月にカンボジアで活動するNPO/NGOに寄贈したソーラーランタンの活用状況を確かめに、カンボジアを訪問してきました。前回のレポートに続き、「NPO法人かものはしプロジェクト」での活用の様子をお届けします。

児童買春撲滅と農村女性の自立を支援する「かものはしプロジェクト」

世界遺産であるアンコール遺跡群の観光拠点となっているシェムリアップ。年間百万人を超える観光客が訪れるこの町は、プノンペンに比べるとこじんまりとしていますが、観光客向けの宿泊施設が多数あり、中には欧米系の高級ホテルも進出していて観光都市として栄えています。しかし、市内から車で15分ほど郊外に出ると、そこにはのどかな田園風景が広がっています。

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左: アンコール・ワット / 右: アンコール・トムのバイヨン寺院

今回ご紹介する「かものはしプロジェクト」は、このシェムリアップを拠点に人身売買・児童買春の撲滅を目指して孤児院支援、警察支援、農村女性の自立支援に取り組んでいます。

2006年には、農村女性たちの就業先として、コミュニティファクトリーを設立。

ブックカバー、ペンケース、定期入れ、名刺入れ、コースター、ランチョンマット、サンダルなど、い草を使ったさまざまな製品が女性たちの手によって作られ、直営店や民芸品店などで観光客向けに販売されています。(日本からインターネット上で購入することもできます)

シェムリアップ市内の市場の一角に、かものはしプロジェクトの直営店があり、こぎれいな店内には、色鮮やかな商品が陳列されていました。ここで、かものはしプロジェクトのスタッフ亀山さんと待ち合わせ、コミュニティファクトリーへ向かいました。

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2012年3月にコミュニティファクトリーで行われた寄贈式。

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シェムリアップ市内の直営店

眼への負担軽減、品質向上、防犯に役立つソーラーランタン

シェムリアップ市内から車で30分ほど走ると、ファクトリーのあるクチャ・コミューンに到着します。この村は国道沿いに位置していますが、市内から遠く、電気が通っていない無電化地帯です。

「チョムリアップ・スオ!(こんにちは)」

私たちの到着に気がつくと、作業の手を止めて皆が集まり歓迎してくれました。コミュニティファクトリーでは若い女性が数多く働いています。い草を切ったり、染色したり、機織機で編み上げたり、ミシンで縫製したり、検品したりと、自分の持ち場に戻った彼女たちはそれぞれの作業に熱心に取り組んでいました。

コミュニティファクトリーの屋根には天窓があり、そこから太陽光が入るため、到着した午後2時頃では、内部は十分に明るく感じました。しかし、夕方になると相当暗くなり、これが作業する女性の眼精疲労につながっているとのこと。曇りや雨の日は、昼間でも同様に暗くなります。とくに冬は日照時間が短く、暗くなる時間が早いため、作業効率や生産性が下がり、品質にも問題が出てしまうそうです。

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屋根の上に設置されているソーラーランタンのソーラーパネル。

そんな状況の中、ソーラーランタンは、ファクトリー全体の照明として、またミシンやカッティング、検品などの作業する女性の手元を照らすために使われていました。ずっと目を凝らして細かい手作業するので、以前は眼精疲労から頭痛を訴える女性も多かったそうですが、ソーラーランタンで手元が明るくなったことで、症状が軽くなったと話す女性たちの話を聞き、とてもうれしくなりました。 また、倉庫内でも室内灯として設置され、ファクトリー外周では夜間の盗難防止として防犯にも役立っているということでした。

自立支援の一環として昼休みに行われているクメール語識字教室の出席率の高い人には、表彰を兼ねてソーラーランタンの貸し出しも行なっているとのこと。「ソーラーランタンがあれば、夜間、家でも勉強することができる」と喜ばれているそうです。

このように、ソーラーランタンは、かものはしプロジェクトにおいても、さまざまな工夫をこらしながら有効に活用されているのを見届けることができました。

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手元の明かりとして活躍するソーラーランタン。

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仕事終わりに行われていた定例会議の様子。

ビジネス活動によって人身売買を解決する

夜、シェムリアップ市内にあるかものはしプロジェクトの事務所で、副理事長であり、カンボジア拠点の責任者である青木健太さんに詳しくお話をお聞きすることができました。

「人身売買や児童買春の被害に遭う少女は、貧しい農村の出身の子が多く、やむを得ず出された出稼ぎ先で騙され、買春被害に遭うケースが後を絶ちません。私たちは、人身売買の根底にある貧困問題を解決するために、農村女性が経済的、精神的、能力的に自立していけるよう、彼女たちの収入の向上を図るべくコミュニティファクトリーを経営しているんです」

人身売買の根底にあるのは農村の貧困問題という認識から、その解決に向けてビジネス活動を通じて取り組んでいる「かものはしプロジェクト」。今後のその取組みの拡大に大いに期待したいと思います。

かものはしプロジェクトでのソーラーランタン活用の様子は、こちらの動画でもご覧になれます。
現地の生の声をぜひお聞き下さい。