インド:アッシャーの夜間診療現場での活用

2013.10.01 Field Report

インド北東部ビハール州では、農村地域に遠隔医療を提供しているWorld Health Partnersと連携しています。コンパクトソーラーライトは、電気がなく真っ暗な家で夜間診療を行う際の唯一の明かりとして重宝されています。

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こんにちは。インド担当の奥田です。

4つのパートナー団体と協力して5000台のコンパクトソーラーライトを2013年3月に寄贈したインド。前回のレポートに続き、今年7月の視察の様子をお伝えします。本当に必要な人々の生活向上に役立っているのかを確かめに、インド最貧州と言われるビハール州を訪ねました。

インドで最も貧しいビハール州

インド北東部に位置するビハール州は、インドの中でも最も貧しい州と言われているエリアです。今回の視察では、州都パトナから車で2〜3時間の場所にあるヴェイシャリー村を訪れました。

ちょうど雨期だったこともあり、空はどんよりとしていて、道路はぬかるみだらけ。村全体がとても暗く感じられました。もちろん、電気を使っている家庭はほとんどありませんでした。

家は、木や木の皮だけで作られた簡素なつくりが多く、泥がついたままの調理道具からは、村人たちの厳しい生活の様子が想像できました。

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雨季のため、道路はぬかるんで歩きづらい状態でした。

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簡素な造りの家が多いビハール州の農村地域。

遠隔医療サービスを提供するWHP

この村でコンパクトソーラーライトを配布しているWorld Health Partners(WHP)は、農村地域に遠隔医療を提供している団体です。
病院まで遠くて通えない人や、診察代が払えない人たちを対象に、インターネットを利用して、低料金で問診や薬のアドバイスを行なっています。

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遠隔医療が行われる村のヘルスセンターには、薬局も併設されています。

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インターネットで都市部の医師とつなぎ、問診を受けることができます。

アッシャーの夜間診療の現場で

WHPは、団体で育成している社会福祉士のほかに各地域のアッシャー(ASHAs 、Accredited Social Health Activists)と協力して、各家庭の診察を行っています。アッシャーとは、政府が発行するライセンスを持ち、医者がいない地域で簡単な問診やヘルスサポートを行なう女性たちのことです。コンパクトソーラーライトの一部は、農村で活動するアッシャーにも配布されていました。

今回、タイミングよく、アッシャーの夜間診療の現場に同行させてもらうことができました。訪問先の家はもちろん電気が通っておらず、暗闇の中、コンパクトソーラーライトの明かりのみで診療が行われていました。

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女性の脚を診療するアッシャー。

日常生活の一部となっていたコンパクトソーラーライト

WHPは、アッシャーのほか、同団体のサービス利用者で、貧困ライン以下で生活している最も収入が低い層に配られるBPLカード*1の対象となる家庭にもコンパクトソーラーライトを配布しています。

ある家庭では、お父さんがコンパクトソーラーライトの明かりの下で、子どもたちに勉強を教えていました。この父親は農村地域では珍しく学歴があり、自分の子どもと親戚の子どもを集めては毎晩一時間ほど勉強をみてあげているそうです。

インドでは、政府のサポートもあって、貧困層でも小学校ぐらいまではなんとか学校に通うことができますが、進級がとても難しいそうです。ほかの家庭でも、コンパクトソーラーライトを使って子どもたちが熱心に勉強している場面に何度か遭遇しました。

熱心に勉強する子どもたちの姿を見て、コンパクトソーラーライトをいくつか集めて集会所などで使うことができれば、より効率よく、子どもたちが集まって勉強することができるかもしれないと思いました。

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3人の子どもたちに勉強を教えるお父さん

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外が暗闇に包まれていく中、縁側でコンパクトソーラーライトの明かりを頼りに勉強する子どもたち。

さらに村の奥へと足を進めると、真っ暗闇の中に、ポツリポツリと小さな明かりが見えました。近づいてみると、それらはコンパクトソーラーライトの明かりでした。
食事の支度や勉強、仕事など、生活の様々なシーンでコンパクトソーラーライトが使われていました。

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夜、コンパクトソーラーライトの明かりでソーイングの仕事をする女性。

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充電する際、「ほかの人が間違って持っていかないように」と自分のイニシャルを書きこんで大切に使っている人もいました。

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コンパクトソーラーライトは、携帯電話の充電にも利用できます。ただ、プラグの形が適合しない場合も多く、「もっといろいろな形のプラグがあると嬉しい!」という声もありました。

この村では、コンパクトソーラーライトが「すでに生活の中に溶け込んでいた」ことがとにかく印象的で、どこの家庭でも当たり前に利用されている様子に、ちょっと感動してしまったほどです。

WHPは、今回のプロジェクトが団体のサービス向上にもつながるということで、とても積極的に取り組んでくださっていました。
配布先の家庭の選定から管理までをしっかりと行い、本当に必要としてくれている人たちにコンパクトソーラーライトが届けられていることが確認でき、とてもうれしく思いました。

BOP層が購入しやすいモデルを目指して

滞在中、「日本製は壊れにくいが高い」という声をよく耳にしました。現地の人々のニーズに応えながら、BOP層の人たちが入手できるような価格設定を目指していく必要があると感じました。

今年の秋には新たなソーラーランタンが発表される予定です。
今回の視察にも1台持参し、試しに点灯させてみると、部屋全体を照らすほどの明るさを確認することができました。

「ソーラーランタンが、農村の無電化地域で暮らす人々のさらなる生活向上に役立つものになるに違いない」という期待に胸をふくらませながら、私は村を後にしました。

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WHPのスタッフの方を通じて、現場のリアルな声をたくさんヒアリングすることができました。