子どもの意見を取り入れ、将来を見据えた地域開発を:プラン・ジャパン

2014.07.31 Our Partners

インドの寄贈先団体の1つであるプラン・ジャパンは、子どもの視点を取り入れながら地域開発を行う国際NGOです。協働のきっかけは、環境教育のプロジェクトに遡ります。プロジェクトを担当している橘祐子さんにお話を伺いしました。(対談日:2014年5月20日)

子どもの意見を地域開発に取り入れ、地域の担い手を育てる

奥田:今日はどうぞよろしくお願いいたします。まずはじめに、プラン・ジャパンの活動内容を伺えますか?

橘:はい。プラン・ジャパンは国際NGOであるプランの一員で、途上国50カ国を対象に、特に農村やスラムなどの貧しい地域の生活をよくしていくための活動を行っています。
地域の問題は複雑に絡み合っていますが、プランでは、「教育」「保健」「性と生殖に関する健康と権利」「家計の安定」「水と衛生環境の整備」「子どもの保護」「子どもたちの地域づくりへの参加」「緊急支援」の8つの分野を重視して改善に取り組んでいます。

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奥田:子どもたちも地域づくりに参加しているのですね。

橘:はい、その点が私たちの大きな特徴です。子どもは単なる支援の受け手ではありません。子どもなりに見えていることや課題に感じていることはたくさんあります。彼らの視点や意見もきちんと取り入れながら、どのように解決していけるかを大人と一緒に意見を交わしながら活動をしています。

奥田:子どもたちはいずれ大人になり、地域の担い手になりますものね。

橘:そうなんです。子どもの頃から地域が抱える課題について考えたり、意思決定をするプロセスに入ったりすることで、やがて彼らが大人になったときに地域をリードしていけるのです。また、子どもの時にきちんと意見を発言できる経験を経て大人になると、自分の子どもたちにも同じような機会を与えていけるので、持続性のある活動になります。

201407_planjapan_2.jpg奥田:視察で現地を訪れたときに、プラン・インド、地元NGO、村の人たちの3者がしっかりした関係を築いて活動されていたのも印象的でした。プラン・ジャパンと、プラン・インドの関係はどのようになっているのですか?

橘:プラン・インドは現地でプロジェクトを直接実施・管理していますが、私たちプラン・ジャパンは資金面などを支援し、プラン・インドと綿密に連絡を取り合いながら、日本をベースにプロジェクトのモニタリングをしています。また、インドには、「国際NGOは、地元NGOと必ず組んで活動をしなければならない」という法律があります。そのため、環境問題や水・衛生環境の整備に強みを持つ地元の団体とも組んでプロジェクトを進めています。

201407_planjapan_3.jpg知識と実践をセットにした環境教育活動から協働がスタート

奥田:プラン・ジャパンさんとの最初の接点は、弊社が持っていた気候変動に関する環境教育の教材をインドの農村部に住む子どもたちにも展開できないか、と相談に伺ったことでした。

橘:はい。インドの学校では、それまでも環境教育は実施されていましたが、より地域固有の問題に焦点をあて、解決を促進する取り組みが必要とされていました。そこで既存の気候変動に関する教材に加えて、水と衛生、ゴミ処理に関する教材をパナソニックさんと新たに共同開発し、知識の習得と実践をセットにした活動に取り組んでいます。授業で学んだことの実践の場として、学校の給水設備の建設や修繕、緑化活動を行っています。参加者の中には、自主的に家庭菜園を始めたことで、栄養改善や副収入として家計を助けることにつながった事例なども出てきています。

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子どもや大人を対象にした環境教育の様子

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環境教育の教材

奥田:うれしいですね。環境教育においては、教科書的な知識を伝えるだけではなく、地域に根ざした実践的な活動にすることはとても重要だと思います。そうしたつながりもあり、2013年3月に、コンパクトソーラーライトを寄贈させていただきました。

橘:いただいたコンパクトソーラーライトは、環境教育プロジェクトを展開している8つの村の特に貧しい家庭に配布されました。また、環境教育トレーニングを夜間に実施する際には、配布したコンパクトソーラーライトを家庭から持ってきてもらい、活用しています。

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夜に開催された環境教育プログラムでの活用の様子

子どもの学習効率が改善。漁師の網の手入れ時にも活躍

奥田:配布先の家庭はどのように選ばれたのですか。

橘:インド政府が定めている貧困ラインを下回っていて、電気へのアクセスのない家庭に配布しています。小学校に通学中の子ども、中でも、女の子や障がいを抱えている子どもがいる家庭を優先しています。

奥田:各家庭ではどのようにコンパクトソーラーライトが活用されているのでしょう。

橘:子どもたちが勉強するときや、母親が料理や針仕事をするときに使っているようです。子どもたちにとって、夜間に勉強ができるようになったことはとても大きな変化で、「宿題が早く終わるようになった」という声が多く聞かれます。また、活動拠点のインド南東部のアンドラ・プラデシュ州ヴィシャカパトナムは海に近いので、漁師さんの家では、夜、網の手入れをする時に役立っているようです。

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コンパクトソーラーライトは宿題や食事の際に役立っています。

奥田:昨年3月、寄贈先の家庭を夜、訪問しました。学校の進級試験の時期だったということもあり、子どもたちがコンパクトソーラーライトの明かりのもとで熱心に勉強している姿を見て、嬉しくなりました。

橘:インドの進級試験は小学生でも留年することがありますから、毎年特にその時期はみんな熱心なんです(笑)。今年3月、新たにソーラーランタンを寄贈いただきましたが、以前のコンパクトソーラーライトよりも明かりが強いので、3段階の明るさのうち、1段階の状態でもきちんと文字が読めるのではないかなと思います。

奥田:そうなんです。部屋全体を明るく照らせるように改良されています。フックもついているので天井から吊るすこともできるんですよ。今後も現地での活用の様子を開発チームにフィードバックして改良を続けていきたいと考えていますので、なにか要望があれば教えてくださいね。

橘:ありがとうございます。

奥田:今後、ソーラーランタンの新しい使い方は検討されていますか?

橘:はい。プロジェクト2年目となる今年は、児童福祉施設にも配布して、夜間に子どもたちが勉強できるようにしたり、村にある農業組合や自助グループのミーティング時にも使えるようにしたり、新しい取り組みを進めています。

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ソーラーランタン(写真左)とコンパクトソーラーライト(写真右)

奥田:それは楽しみです。最後に、弊社への要望などがあればお聞かせいただけますか。

橘:パナソニックさんは日本ではもちろん、海外でも知名度のある大企業さんです。そのパナソニックさんに、私たちの団体との協働についてご紹介いただけることは、団体の認知度向上という観点からもありがたいことです。また、環境教育プロジェクトを資金面でご支援いただき、さらにそのプロジェクトの活動で使用するために非常にいいソーラーランタンを提供していただいているので、プロジェクト全体への相乗効果も期待できます。ぜひこういった社会貢献活動を今後も継続していただきたいですね。
資金力・技術などを持つ企業と、草の根レベルのネットワークや途上国での活動に知見を持つNGOが協働し、途上国の抱える社会課題の改善・解決にともに取り組んでいくことは有意義だと思っています。私たちプラン・ジャパンとしても、パナソニックさんとの連携により、活動地域の状況をさらに改善していきたいと思いますので、何かあればまずご相談いただければと思います。

奥田:ありがとうございます。ぜひこれからも一緒に様々な取り組みを進めていけたらと思います。今後ともよろしくお願いします。

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