保健医療人材を育て、住民主役の保健医療を目指す:シェア=国際保健協力市民の会

2014.08.29 Our Partners

アジアの途上国および国内で保健医療活動を行うシェア=国際保健協力市民の会は、カンボジアの貧困州のひとつ、プレイベン州で活動を展開しています。命に直結する保健医療分野の活動や現場でのソーラーランタンの活用の様子について、事務局長の佐藤真美さんにお話を伺いました。(対談日:2014年6月4日)

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保健医療人材を育成し、すべての人に健康を

星:シェアさんとは、1年ほど前に、当社社員向けにシェアさんの活動内容についてお話いただくトークセッションを共同で開催させていただきました。その節は、ありがとうございました。

佐藤:こちらこそありがとうございます。私どもの活動を、より多くの方に知っていただく機会がいただけて、大変うれしく思っていました。

私たちシェアは、1983年の設立以降、「すべての人に健康を!」という理念のもと、社会の中で厳しい境遇にある人たちが、健康に生活し基本的な医療サービスにアクセスできるようになることを目指し取り組んできました。現在はアジア3カ国(カンボジア、東ティモール、タイ)と日本国内で活動を行っています。

星:活動のアプローチとして、直接医療行為をするのではなく、現地の医療従事者を育てることに重きをおいていることがとても印象的です。

佐藤:私たちが大事にしている理念のひとつが、住民が主役となり、持続的に健康への取り組みを続けられることです。私たちはある期間だけ必要なお手伝いをし、その後は地域の人たちが自分たちの手で活動を続けていけるように、ということを常に意識して活動しています。

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内戦からの復興で発展途上にあるカンボジアの保健医療

星:自分たちの手で健康を守れるようになることは、継続性の面からも重要なことだと思います。カンボジアの保健医療の課題について、改めて教えていただけますか。

佐藤:はい。カンボジアは60年代からベトナム戦争の影響を受け、ポルポト時代やその後の内戦によって、基本的な国づくりに必要な人材や仕組みが全て失われてしまいました。90年代以降、徐々に復興していますが、保健医療分野の人材は絶対的に足りず、医療従事者の知識やスキルも不足しています。そこで私たちは、特に乳幼児の健康増進に焦点をあて、末端で医療サービスを提供する保健センターがきちんと子どもたちに健診活動を行い、体重が伸び悩む子や病気になった子に対して適切な対応がすぐにできるように、人づくりに取り組んでいます。

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星:活動地のプレイベン州は国内でも特に乳幼児死亡や栄養不良が多い地域の一つということですが、子どもたちの健康状態の改善のために、どのようなことが必要とされているのでしょうか。

佐藤:貧しくて十分に栄養を得られないということもありますが、知識不足という問題もあります。たとえば、通常推奨されている6ヶ月の完全母乳が終わる前に、母親が農作業に出たり、出稼ぎに行ったりすることがあります。そうすると、年上の子どもや祖父母が面倒を見ることになり、必要な時期に母乳を通して十分な栄養を得ることができず、食事や病気のケアも不十分になりがちです。

粉ミルクもありますが、基本的に輸入品のため高価で、説明が外国語で読めないため、分量を節約したり、砂糖を入れたりと、間違った使い方をしている場合も。そこで母親たちに対して、離乳食教室などの啓発活動も行っています。

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夜間の分娩や急患時に活用されるソーラーランタン

佐藤:寄贈いただいたソーラーランタンは、保健センターで夜間の急患や分娩 時に活躍しています。以前は明かりが十分にない状況でしたが、ソーラーランタンのおかげで安心して処置ができるようになりました。

星:前回訪問した際に、偶然夜間の出産に立ち会わせていただきました。ソーラーランタンが命の誕生に貢献できていることを実感して感動しました。ひと月にだいたいどのくらいの出産があるのですか。

佐藤:ひとつの保健センターで月に20〜40件ほどです。ほぼ毎日出産があり、助産師2名体制でないとまわらない状況です。

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ソーラーランタンを受け取る助産師

星:それは多いですね。他に、ソーラーランタンはどのように使われているのですか。

佐藤:保健ボランティアの活動にとても役立っています。保健ボランティアは村単位で任命され、保健センターと患者をつなぐ役割を果たしているのですが、夜、患者に付き添う際に、夜道を安心して移動できるようになったそうです。また、これまでは携帯電話を持っていても電池切れでつながらないことが多かったのですが、ソーラーランタンから充電できるので、保健センターと保健ボランティアがスムーズに連絡を取り合えるようになったと聞いています。

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現地のニーズを踏まえ、本当に必要な人へ届ける

佐藤:今回新しくいただいたソーラーランタンは以前のものよりコンパクトで、非常に使い勝手がいいと好評です。自分でお金を出してでも買いたいという声もあるぐらいなんですよ(笑)。

星:ありがとうございます。そういう声をいただくことも増えてきました。少しでも余裕のある方には購入していただけるよう、すでにミャンマーでは販売も開始しています。今後カンボジアでも展開していければと考えています。
最後に、ソーラーランタン10万台プロジェクトになにかご要望があれば、教えていただけますか。

佐藤:ただ物を送るという一方的な支援ではなく、それをどう最大限に生かせるかということもお話しながら、これからも一緒に寄贈を進めさせていただければと思います。私たちは、現場のニーズと支援のアイデアをマッチングできる立場にいますので、タイミングやプロセス、対象者という視点を踏まえ、一番必要としている人たちに支援が届くようにしていきたいです。

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星:そうですね。最初の寄贈時に、必要性をとても慎重に検討されていたのが印象的でした。

佐藤:ええ、ハードの支援を行う際には注意深く検討した上で、決めています。育成した人材が力を発揮するためには、電気をはじめとした基本的なインフラを整備する重要性をちょうど感じていた時期でしたので、本当にいいタイミングで寄贈のお話をいただきました。

星:シェアさんのような現場に入って草の根で活動されているNGOの方々と組ませていただくのは重要なことと考えています。ソーラーランタンが社会課題の解決に向けて最大限の効果を発揮するために、今後も一緒に活動させていただければと思います。これからもよろしくお願いします。

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