新しい命の誕生を支える明かり:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

2015.09.15 Our Partners

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、5歳未満の子どもの死亡率が高いミャンマーで、子どもの健康、栄養改善に取り組んでいます。現地事務所で長年活動されてきた藤野康之さんに現地の状況、ソーラーランタンの活用法などをお聞きしました。(対談日:2015年6月25日)

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地方農村の新生児に焦点を当てて活動

: 藤野さんとお会いするのは、昨年11月にヤンゴンで行われたソーラーランタン寄贈式以来ですね。日本での再会を、とても嬉しく思います。ミャンマーは今、民主化や経済開放で大きく変化していますが、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンさんはいつごろからミャンマーで活動されているのですか?

藤野 : 2001年にミャンマーに事務所を開設し、ミャンマー保健省と締結した覚書(Memorandum of Understanding)のもと、2003年から、現地の助産師さんと連携しながら本格的に活動をスタートしました。主に5歳未満の子どもの健康改善、栄養改善や、妊産婦さんのケアやサポートに取り組んでいます。私は2009年7月から約5年半の間、現地事務所で働きました。

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: 5歳未満の子どもの健康改善に関しては、ミレニアム開発目標(MDGs)においても第4の目標として「乳幼児死亡率の削減」が掲げられており、重要課題と認識していますので、私たちもソーラーランタン寄贈を通じてこれに貢献したいと思っています。セーブ・ザ・チルドレンさんは世界120カ国で、子どもの権利を推進する活動をおこなっていらっしゃいますが、とくにミャンマーの子どもたちの状況はいかがですか?

藤野 : 非常に厳しいものがあります。5歳までの子どもの中でも、12カ月未満の子ども、とくに生後28日以内の新生児の死亡が多く、全体の約4割を占めています。死亡原因は早産が約3割で、ほかには生まれてすぐに敗血症などの感染症でなくなるケースが多いです。仮死状態で生まれてくる子どももたくさんいます。また、母親を取りまく状況も同様で、妊産婦死亡の生涯リスク、5歳未満児の死亡率などの5つの指標から世界各国の母親の現状を比較検討した「お母さんに優しい国ランキング(※)」でも、ミャンマーは178か国中157位となっています。

※セーブ・ザ・チルドレンが毎年母の日にあわせて発行している「母の日レポート」の中でランキングを発表。

: そうなのですね。都市と農村での違いはどうですか。

藤野 : 5歳未満の子どもの死亡の約9割が地方の農村で発生しているとの報告があります。また、医療従事者による分娩介助率も都市は9割ですが、地方は約6割です。したがって、国内における健康格差が大きな問題です。そこで私たちは、最も支援を必要としている地方農村において、母と子を一体としながら、新生児にフォーカスをあてた活動を展開しています。

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5歳未満の子どもの死亡の87%が農村部で起こっています。

助産師の多くは、真っ暗な中で活動

藤野 : 農村部はとくに無電化地域が多く、私たちが支援している地域はほとんど電気が通っていません。夜になると月明りで影ができるくらい真っ暗です。

: ミャンマーの無電化率は国全体で68%、農村部では82%と、アジアの中でもとくに高いですよね。そうした暗闇の中、助産師さんが分娩を介助するのは大変なことなのではないでしょうか。

藤野 : 私たちが支援しているタウンシップ(郡)では、助産師1人につき年間約100人の出産に立ち会っていて、そのうち約8割が自宅出産で多くが夜中のお産です。助産師は連絡を受けてから、時には真っ暗な夜道を数時間かけて妊婦の自宅まで歩き、ろうそくや懐中電灯の明かりのもとで分娩介助をしています。細心の注意を払っていますが、明かりが足りず、きちんとしたケアができない場合もあります。

こうした苦労を聞いて対策を考えていたときに、ミャンマーのNGO団体からパナソニックさんのソーラーランタンの話を聞きました。その後、担当者から説明を受け「これは耐久性もあるし、信頼できる商品だ」と確信したんです。

: ありがとうございます。そこからDeNAさんと取り組まれている「命を救うホームラン」につながっていくのですね。横浜DeNAベイスターズの選手が公式戦でホームランを1本打つごとにソーラーランタン1台を寄贈するという活動で、素晴らしい取り組みだと思います。

藤野 : はい。それ以来、試合のホームラン数は必ずチェックするようになりました(笑)。

: 私も気になって、よく見るようにしています(笑)。ちょうどパナソニックでも、今後は母子保健の分野にも貢献していきたいと思っていた時に「命を救うホームラン」の取り組みを知りました。こうしてご縁をいただけて、大変うれしく思っています。

藤野 : こちらこそ。昨年はDeNAさんからの寄贈190個も含めて、合計10のタウンシップ(郡)で活動する助産師394名にソーラーランタンを届けることができました。

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寄贈式ではセーブ・ザ・チルドレンのスタッフが助産師1人ひとりにソーラーランタンを手渡し、その後、ミャンマー語の説明書を使いながら丁寧に時間をかけて説明しました。

助産師の様々なニーズに対応

: 助産師のみなさんはどのようにソーラーランタンを活用しているのでしょうか?

藤野 : 主に、夜間の分娩介助時の光源として活用されています。必ずしも衛生的ではない環境で行われることが多い自宅出産で、しっかりとした光源のもとで産後の適切なケアをおこなえるため、感染症を予防することができます。また、妊婦さんの家に向かう夜道では明かりがあることでヘビ対策にもなっています。他にも、昼間でも暗い家の中で行う妊婦健診や、夜に保健局への報告書を作成する際にも使われているようです。助産師からは「持ちやすいし、頑丈にできていて壊れない」と好評で、すでに日中の充電が日課になっています。

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出産時だけでなく、助産師が毎月提出する報告書の作成時にもソーラーランタンが活躍しています。

赤ちゃんは、平和と未来の象徴

藤野 : ソーラーランタンは、新しい命の誕生を見届ける、大きな安心と希望と未来をもたらす明かりだと思います。ミャンマーには330のタウンシップがあり、そこで約1万人の助産師が働いています。まだ電気のないタウンシップはたくさんありますので、1人でも多くの助産師にソーラーランタンを届けていきたいと考えています。

: そうですね。命が生まれてくるということは、言葉にあらわせないほど感動的なものです。そのお役に立てるのは、この上ない喜びでもあります。今後とも無電化地域の妊産婦と新生児を救うために明かりを届ける活動をぜひご一緒していけたらと思います。

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藤野 : ありがとうございます。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとパナソニックさんは、全く異業種でありながら、3つの共通点があると私は考えています。1つ目は理念の普遍性、2つ目はその理念が創業者・創設者から脈々と継承されている点、3つ目は世界を視野に入れ、グローバルな事業展開をおこなっている点です。これらは我々の大きな強みだと思います。今後もお互いに知恵を出し合いながら協力していきましょう。

: 本当ですね。今回いただいたご縁を、今後さらに発展していけたらと思います。これからもよろしくお願いします。

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