【Voice】夜の識字教室で活用~シャンティ国際ボランティア会~

2015.09.30 Voices

アジア6カ国で図書館支援や学校建設などの教育支援を続けるシャンティ国際ボランティア会では、昨年、カンボジアのコンポントム州とシェムリアップ州にコミュニティ図書館をオープンしました。ソーラーランタンは、ポル・ポト政権時代の影響で読み書きができない大人たちのための夜間の識字教室で利用されています。

こんにちは。シャンティ国際ボランティア会(SVA)カンボジア事務所の江口秀樹です。パナソニックから寄贈いただいたソーラーランタンは、コンポントム州コンポンスヴァイ郡にある無電化地域の一つ、ニーペック集合村で開かれている夜間の識字教室で利用されています。参加者たちは皆、明るい光の下でいきいきと学んでいます。

貧困の連鎖を断ち切るために

1990年代後半に内戦終結を迎え、都市部を中心に急速な経済成長を遂げているカンボジアですが、1970年代後半のポル・ポト政権時代、学識者や教員の多くが虐殺され、人々は教育を受ける機会を奪われました。そのため、大人になっても読み書きができない人が今もまだたくさんいます。読み書きや計算ができないと、農業や保健衛生などの生きていく上で重要な情報を得られず、また職につくこともできないため、貧困から抜け出せない原因にもなっています。

とくに農村地域の識字率の低さは著しく、ニーペック集合村の人々も例外ではありません。村人たちは、「米や家畜を売るとき、計算ができないために安く買い叩かれてしまう」「役場にあるポスターやチラシが読めない」と日々の苦悩を語ります。

学ぶ母親たちを照らすランタンの明かり

こうしたなか、長年農村地域などで図書館を通じた教育支援を続けてきたSVAは、昨年、子どもから大人まですべての人が学べるコミュニティ図書館を同村に立ち上げました。

こちらのコミュニティ図書館では週6日、大人向けの識字教室が開催されています。授業は農作業などを終えてからでも参加しやすい18〜20時の2時間。参加者の多くは子ども連れの母親たちで、授業中は図書館に設置された託児所で子どもたち向けに本の読み聞かせも行われています。

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母親たちが識字教室で勉強している間、子どもたちは絵本の読み聞かせに参加したり、ボードゲームなどで遊んだりして過ごします。

「病気になったとき、薬のラベルを読んで正しい薬を服用したい」「看板や標識を読めるようになって、新しい場所で戸惑うことがないようにしたい」「本が読めるようになりたい」−−母親たちが参加する理由はさまざまですが、皆、やっと手に入れた学ぶ機会に、大きな喜びを感じています。

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識字教室の様子。20〜70歳までの女性と若いお坊さんら合わせて33人が参加しています。

ソーラーランタンの明かりは、そんな母親たちを照らす、なくてはならない存在です。夜の識字教室や図書館では、天井から吊るして部屋全体を照らしたり、机の上に置いて数人で一台を利用したり、母親たちは工夫しながらソーラーランタンを使っています。

ソーラーランタンの光は、村に明かりをもたらしただけではなく、夜間に学ぶ母親たちを支え、道を切り拓く力になっています。