難民にも地元住民にも役立つ支援を:UNHCRコンゴ民主共和国(DRC)事務所

2016.06.16 Our Partners

2016年3月、パナソニックは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ民)の難民キャンプにソーラーランタンを寄贈しました。現地で活動されてきた木村真紀葉さんに、難民や地元の人々の抱える問題、今後の難民支援の在り方などをお聞きしました。(対談日:2016年4月25日)

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写真左から木村真紀葉さん(UNHCR)、田中典子(パナソニック)

フェイスブックでの問い合わせが、寄贈のきっかけに

田中:今回の寄贈は、木村さんがソーラーランタン10万台プロジェクトのFacebookページにメッセージを送ってくださったことがはじまりでした。

木村:そうでしたね。ちょうど当時の事務所長から「日本企業と何かできないか」という話があり、情報を探していたところ、プロジェクトのWebサイトに辿りつきました。読み進めるうちに「ここしかない!」と確信し、すぐにメッセージを送りました。

田中:「コンゴ民」と聞いても、具体的なイメージがわかない人がほとんどだと思います。どのような国なのか、教えていただけますか?

木村:はい。コンゴ民はアフリカ中部に位置し、特に開発が遅れている後発開発途上国のひとつに指定されています。残念ながら、一部、紛争地域も残っています。アフリカで二番目に広い国土を持ち、電化率はわずか9%(*1)とほとんどが無電化地域です。私が駐在していた北部の都市バドリテは電気が通っていましたが、北西部一帯はほぼ無電化地帯です。また、バドリテも、ダムのトラブルなどで電気を使えないことがよくあります。そうした中、太陽光だけで充電、使用できるソーラーランタンの必要性を強く感じていました。

  1. World Energy Outlook 2015より

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田中:最初にご連絡をいただいてから約半年で寄贈が実現したわけですが、アフリカでは異例の速さでした。安全に輸送するトラックが手配できない、行ったけれど途中で橋がなくて引き返す、などのトラブルも多くあり、時間を要します。今回は、木村さんをはじめとするUNHCRのスタッフの皆様のご尽力によりスムーズに進めることができました。

木村:私も無事に配布ができてほっとしています。輸送の調整は、普段援助物資を送っている担当者にお願いしたので、大きなトラブルもなく受け取ることができました。

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インケ難民キャンプにて行われたソーラーランタンの引き渡し式には在コンゴ民主共和国日本大使館の野口修二臨時代理大使も出席されました(中央)。

地元住民と難民の関係性を配慮しながらの援助

木村:私が勤務している北部地域には、3年ほど前に紛争が激化した隣国の中央アフリカ共和国からの難民が多くいます。その他にも国内には、ルワンダ、ブルンジ、南スーダンなどの周辺諸国から、40万人にのぼる人々がコンゴ民に逃れてきています。

田中:国内にも様々な問題を抱えるなかで、多くの難民を受け入れているのですね。

木村:難しさもあります。たとえば、事務所近くの人口約5000人の村には、そこに設置された難民キャンプにおよそ2万人の難民がいます。そうすると当然、地元住民との間に軋轢が生じます。難民が燃料用に薪を切ったことで森林伐採が進んだり、学費が払えない難民の子どもが学校に多数入ってきたり...。地元住民も貧しいので、自分たちではなく難民のためにUNHCRなどの人道支援機関のお金が使われることへの反感もあります。こうした問題に対して、劇やダンス、スポーツや対話集会などを通じて、両者の相互理解を促す啓発活動をおこなうことが私の仕事です。また、UNHCRは地元住民側の村に井戸を堀るなどの支援も行っています。

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モレ難民キャンプの病院の方々と共に

医療施設、難民受け入れ施設でソーラーランタンを活用

田中:寄贈したソーラーランタンは、どのように活用されているのでしょうか?

木村:5つの難民キャンプとその周辺にある病院、診療所、保健所などの医療施設、および9つのトランジットセンターにソーラーランタンを配布しました。トランジットセンターは、難民として逃れて来た人が最初の数日間滞在する施設なのですが、全く電気がない場所や、発電機はあっても使用が非常に限られている場所もあり、夜は完全な暗闇です。女性や女の子がトイレに行くときに真っ暗だと暴力の被害にあいやすいので、光があるだけで安全性が高まります。ソーラーランタンの明かりは、被害を受けやすい女性や女の子の保護に役立っています。

田中:明かりがあることの安心感は特に女性にとっては大きいですね。パナソニックではこれまでにもケニアなどで難民キャンプにソーラーランタンを寄贈してきましたが、同様の効果があると聞いています。

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トランジットセンターの宿泊施設の様子。1つのソーラーランタンだけでも、かなりの光量があります。

木村:また、キャンプ周辺の村の病院や診療所などにも配布しました。キャンプの外で親戚の家の一部や自ら家を借りて暮らしている難民の人もいますし、村の医療施設はキャンプより粗末な場合もあるので、地域にも恩恵が及ぶようにできれば、という思いもありました。施設の医師は、「お産の際、今までは懐中電灯を使っていたが、ソーラーランタンのおかげで部屋がとても明るくなり、安全性が高まった」と、とても喜んでいました。

田中:難民とひと言で言っても、いろいろな状況の方がいらっしゃるのですね。ソーラーランタンの明かりが難民と地元住民の良好な関係を築く一助になれたら嬉しいです。

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配布先のトランジットセンターで、責任者と共にソーラーランタンの使い方を説明

難民の自立につながる支援を

田中:今日は現地の様子をいろいろと教えてくださり、ありがとうございました。状況は常に変わっていくとは思いますが、今後も、UNHCRさんとご一緒できたらと思っています。

木村:ありがとうございます。UNHCRのこれからのテーマは、難民の自立につながる支援です。キャンプでの生活は長期にわたることが多く、ともすると援助されることが当たり前になってしまいます。物資を渡すのではなく、現金を渡して個々でやりくりしてもらうなど、支援に依存しない体制づくりが今後は大切になってくると考えています。パナソニックさんには、今後ともいろいろとご協力をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いします。