子どもや女性のエンパワメントに活用: エスワティニ王国からの報告

2018.11.01 Voices

昨年3月に寄贈したエスワティニ王国(旧国名:スワジランド王国)から、レポートが届きました。ソーラーランタンは、無電化地域の日々の暮らしの中で活用され、教育や生活の質向上、女性のエンパワメントなどに役立てられています。

皆さん、アフリカの「エスワティニ王国」と聞いてピンと来るでしょうか? 実は、旧名スワジランド王国のことで、今年4月、英国領からの独立50周年を祝う記念式典の中で、国王ムスワティ3世によって、国名の変更が発表されました。現地語のシスワティ語で、「エスワティニ(スワジの地)王国(Kingdom of eSwatini)」という意味で、植民地支配以前に用いられていた名前です。

小さな国が抱える深刻な社会問題

エスワティニ王国は、アフリカ南部に位置し、南アフリカ共和国とモザンビークに囲まれた内陸国です。国土は日本の四国よりやや小さく、人口は134万人で、国土の約80%が農地、人口の70%以上が農業に従事しています。肥沃な土地、温暖な気候で、水・鉱物資源に恵まれているため、砂糖、柑橘類、綿花、木材などの農林業が主要な産業となっています。

一方で、抱える社会問題は深刻です。失業率が高く、経済状況が悪化しており、国民の7割が1日1ドル以下で暮らしています。また、HIV/AIDS罹患率が人口の約3割と非常に高く、労働力不足も懸念されています。2015年から発生している干ばつの影響で深刻な食料不足と栄養不良の状態にあり、5歳以下の幼児の4人に1人が成長障害を発症しているとも言われています。全国的な電化率は65%*1ですが、農村地域の電化率は24%と低く、農村部に住む貧困層の人々は電気のない生活を余儀なくされています。

こうした厳しい状況の中で生活する人々の暮らし向上に向けて、昨年寄贈されたソーラーランタンは、高校や女性起業家支援団体、研究機関などに配布されました。

「ソーラーランタンの明かりのおかげで、売上が増えました」

エスワティニ王国では、女性差別が深刻で、男女間で就労や賃金格差が大きいことが長年の課題となっています。寄贈したソーラーランタンは、伝統工芸品の生産によって経済的自立・収益向上を目指す女性起業家たちが活用しています。「ソーラーランタンの明かりのおかげで、夜間に作業できるようになり、売上が増えた」と喜んでいました。

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高校に配布されたソーラーランタンは、子どもたちの自宅学習で利用されています。ある学生は、「ソーラーランタンのおかげで、登校前の家事や、夜間の宿題ができるようになりました」とうれしそうに話していました。

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ソーラーランタンは、村の家畜の飼育や、飼育場に行くための通路の照明として利用されています。

今後も、無電化地域に暮らす人々の持続可能な発展を願いながら、見守っていきたいと思います。

  1. IEA World Energy Outlook 2016