ミャンマー:突然の停電でもすぐに点灯!医療現場で活躍するコンパクトソーラーライト

2013.11.15 Field Report

9月上旬に行ったミャンマー視察報告の第2弾。海外で医療機会の提供を行うパートナー団体「認定NPO法人ジャパンハート」の活動拠点のひとつ、ワッチェ慈善病院を訪問したところ、手術中の明かりとしてコンパクトソーラーライトが活躍していました。

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こんにちは。CSR・社会文化グループの星 亮です。

2013年2月に合計3000台のコンパクトソーラーライトを寄贈したミャンマーに、9月に視察に行ってきました。前回の記事(寺子屋での利用)に続いて、医療支援を行なっているパートナー団体「認定NPO法人ジャパンハート」での活用の様子をご紹介します。

お寺が運営するチャリティホスピタルへ

もしも自分が手術を受けている時に停電が起きて真っ暗になったら?とても怖いし、不安になると思います。しかし、まだまだ電気の供給が不安定な途上国では、突然の停電はよくあること。命と直結する手術中の明かりの確保は、医療現場では、とても重要な課題です。

今回うかがったのは、ジャパンハートのミャンマーにおける活動拠点のひとつ、同国中部のザガイン管区にあるワッチェ慈善病院。町の中心部からは少し離れた川沿いに立つ、お寺が運営している病院です。

その1階部分を使用し、ジャパンハートは医療活動を行っています。 病院は、一般財団法人新倉会と協力して行っているミャンマー人医療者育成の現場としても利用されています。
病室は、男性、女性の大部屋、そしてなんとお坊さんの部屋に分かれていました。お坊さんの部屋は眺めもいちばん良く、さすが仏教国です。

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視察先のワッチェ慈善病院。

病院内に溢れるたくさんの患者さん

ジャパンハートは、「医療の届かないところに医療を届けること」を活動理念に、海外での医療機会の提供を中心とした活動を行っているNPO団体です。代表の小児外科医・吉岡秀人先生は、日本でもテレビや雑誌など、様々なメディアに出ているので、ご存知の方も多いと思います。

ミャンマーには医療保険制度がないので、治療費は全額自己負担になります。しかしジャパンハートでは、アーティストの浜田省吾さんが設立した基金であるJ.S.Foundationにより、子どもの手術費、治療費、交通費はすべて無料となっています。
大人の治療も、政府の病院の1/5〜1/10の料金で受け付けています。
医療技術も高いことから、病院内は、噂を聞きつけてやってきた患者さんとその家族で常にいっぱいです。

「家の周りには医者がいません。以前に治療を受けた人から話を聞き、車で6時間かけてきました」という患者さんもいたそうです。

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廊下で順番を待つ患者たち。

1日に十数件の手術が行われる

こちらでは、初めての患者はまず診察を行い、手術が必要な場合には経過をみて、2、3ヶ月後に再び来てもらいます。手術を行なうのは、代表の吉岡先生をはじめ、日本からボランティアで来ている医師の方々。吉岡先生が月に2度、1週間程度やってくるタイミングで、集中して手術を行います。視察の日も、十数件の手術の予定が入っており、その日のうちにすべて終わらせるとのことでした。

同じように診察も、どれだけたくさんの人がやってきても、遠くから来てくれた患者さんのために、次の日に持ち越さず、その日のうちに見るのが、ジャパンハートのポリシーです。

口唇裂や甲状腺が腫れてできたこぶの切除、火傷や鼠径ヘルニアなど、本来であれば必要な治療や手術を受ければ治る病気なども多く見られます。

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口唇裂の手術のために来院していた男の子。

ジャパンハートが作った新しい医療貢献の仕組み

ワッチェ慈善病院で働くジャパンハートのスタッフの中にはローカルスタッフもいますが、日本からやってくる20代〜30代の短期ボランティアスタッフがほとんどです。

吉岡先生のお話によると、国際医療団体は通常、相当高いレベルの技術がある医師を海外派遣の要件としているため、参加の敷居は高く、結果として限られた数の医師しか海外での医療活動に従事することができません。しかし、ジャパンハートでは希望者は誰でも受け入れ、短期でも参加できる仕組みを作り、若い人たちが国際医療支援に参加する門戸を開きました。今では、年間300人以上の医師、看護師、一般のボランティアがジャパンハートの活動に参加しています。

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診察室にて、問診を行なうボランティアスタッフのみなさん。

「現地の人は"ただ診療や手術を受けられるだけでありがたい"、みなさんそう言います。要は、ニーズに合うことが大切なんです。だから僕はその人のレベルにあったことをやればいいと思っています。ボランティアにくる日本の人たちは、自分にできることをやって現地の人に感謝され、自分の存在価値を受け取って帰ります。そこに大きな価値を感じてくれるから、ボランティアでも大勢の医師たちが飛んできてくれるんです」

吉岡先生はジャパンハートの特徴をこのように語ってくれました。

手術中に停電が発生!

ワッチェ慈善病院は、昼間でも室内が薄暗く、手術するには照明が必要不可欠です。また、件数が多いので、夜間までかかるのは日常茶飯事。しかし停電が多く、視察の間だけでも3回はありました。

夜の7時ごろ、手術を見学させてもらおうとしたところ、停電が起きました。停電時の暗さは、普段、電気が当たり前に使えている私たちには想像もつかないような真っ暗闇です。

停電が起きると非常用の発電機に切り替えるのですが、動き出すまでにしばらく時間がかかります。その間に看護師たちはコンパクトソーラーライトをパッとつけ、手術は無事に続けられました。

医療現場のコンパクトソーラーライトが、いのちを助けることにつながっていることを実感した瞬間でした。

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コンパクトソーラーライトはひもをつけていつでも手に取れる場所にスタンバイ。

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コンパクトソーラーライト4台を使って充分な明るさを確保します。

夜間巡回でも活躍

コンパクトソーラーライトは、看護師による夜間巡回でも、患部を照らす明かりとして利用されています。 巡回中、今回持ってきていた12月に発売予定の新型ソーラーランタンを試しに使っていただきました。これまで寄贈してきた無電化地域の利用者の声を反映して改良を重ねた結果、見た目にもはっきりわかるほど新型ソーラーランタンは明るく、「ずっと明るいですね!」と、看護師の方も喜んでおられました。

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コンパクトソーラーライトと新型ソーラーランタンの明るさを比べてもらいました。違いは一目瞭然でした。

今後もさらなる連携を

手術の合間を縫って、代表の吉岡先生にもじっくりとお話をお聞きすることができました。医療活動を通じて海外の貧しい人々を救おうという吉岡先生の強い意志、そして若い医療者から一般の人まで、誰もが参加できる新しい仕組みをゼロから創り出したという行動力に、非常に感銘を受けました。

現地の人も、ボランティアの人も、みんながハッピーになれるというジャパンハートの仕組みは本当にすばらしいと思います。今後も、いろいろと連携していけたらと、改めて思いました。

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認定NPO法人ジャパンハートの代表、吉岡秀人先生。