徹底した調査でソーラーランタンの効果を検証:日本福音ルーテル社団(JELA)

2015.02.13 Our Partners

「ソーラーランタンの寄贈は、一体どれほどの効果をもたらしているのか?」日本福音ルーテル社団(JELA)は、寄贈活動の成果の検証のため、インドとカンボジアで使用者へのアンケート調査に取り組んでいます。(対談日:2014年12月22日)

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対談に参加いただいたJELAの皆さま。前列左より、中川浩之さん(理事長)、今井哲男さん(理事)。後列左より、奈良部慎平さん(広報兼渉外担当)、森川博己さん(事務局長)、ローウェル・グリテベックさん(シニアアドバイザー、国際開発学博士、国際経営学修士)。

一人ひとり丁寧に、聞き取り調査を実施

星:今日は普段やりとりをさせていただいているグリテベック博士と奈良部さんをはじめ、理事長の中川さん、理事の今井さん、事務局長の森川さんまでお集りくださりありがとうございます。

中川:私たち日本福音ルーテル社団(JELA)はキリストの愛の精神を実践する一般社団法人で、教会のサポートに加え、国内の難民や世界の子どもたちの支援など、幅広い活動を展開しています。今日は、寄贈先であるインドとカンボジアで行ったソーラーランタンの使用状況と成果に関する調査内容を、ローウェル・グリテベック博士からお話させていただきます。

星:寄贈後の効果について、詳しいデータに基づき定量的に把握することは大変な作業だと思います。報告をお聞きするのが楽しみです。

グリテベック:寄贈から4~6カ月後に、ソーラーランタンを受け取った約300人を対象に、JELAが用意したアンケート用紙を用いて現地担当者がデータ収集を行いました。回答数の3/4がインド、1/4がカンボジアの方たちです。

奈良部:日本から現地にも何度か視察に行きました。聞き取りした内容は1件1件、現地スタッフが調査票に記入し、我々日本のスタッフが情報の分析を行いました。カンボジアでは数字もすべてクメール語で書かれていたので、対象表と照らし合わせながら解読する必要があり、大変でした(笑)。

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本当に苦しんでいる人に、支援の手を

グリテベック:ソーラーランタンの寄贈先家庭の平均月収は約8000円。当然家庭に電気は通っておらず、これまでの主な光源は、58%が灯油ランプ、22%がろうそく、14%が懐中電灯でした。月収に占める光熱費の割合は平均9%です。収入が低い世帯はそもそも他に回せるお金が限られているため、光熱費を少しでも安く抑えられると、その分を教育などの経済的自立につながる支出に使えるようになり、大きな効果が期待できます。

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寄贈先家庭の平均月収約8000円。これは、国連が示す、生きていくために必要な収入よりも低い金額です。

星:調査にあたって気を付けられたことはありますか?

グリテベック:情報の正確性ですね。調査では、第三者からも裏付けを取るようにしています。たとえば、子どもの勉強面での効果について調べるときには、両親だけでなく、子どもを教えている先生にも確認します。 また、こうした調査では、母数が重要です。データが増えると、明確な傾向が分かるようになるからです。学術の世界では、250人が最少人数です。今後1000人まで増やしていきたいと考えています。

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勉強時間は2時間増加、光熱費は半分以下に

グリテベック:ソーラーランタンの一日の平均使用時間は、3.12時間でした。用途は、料理、勉強、緊急時(急病など)の順に高く、使用により効果を感じる項目は、教育、家事、家計の順に高い結果でした。灯油ランプの黒い煙は見るからに有害なので、効果として健康を挙げる人がもっと多いと想定していたのですが、それほど高くありませんでした。貧困に苦しんでいる人たちは、他により深刻で優先すべき問題が多くあるためと考えられます。

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ソーラーランタンによる効果を感じている項目は、教育、家事、家計、利便性向上、健康の順に高くなっていました。

グリテベック:大きな成果が表れたのが、子どもの勉強時間です。平均で2.05時間、勉強時間が増加していました。このまま頑張って勉強を続けていけば、将来、貧困から抜け出す道が開けていくことでしょう。先生も、「子どもたちの成績が本当に良くなった」と話していました。

星:それは嬉しいですね。現地に視察に行くと、どこの国でも、ソーラーランタンの明かりの下、子どもたちが目を輝かせて勉強している姿が印象的です。

グリテベック:家事および内職時間にも増加が見られたほか、光熱費は半分以下に減りました。節約したお金で栄養のある食材や薬を買えるようになり、健康の改善につながっています。

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光熱費が57%削減され、食材や薬、子どもの学校用具を買えるように。

星:具体的な成果が数字で分かり、大変貴重な情報で、ありがたいです。収入が低い世帯にとっては、大きな金額ですね。

グリテベック:また、特にインドでは「安全」の確保のためにソーラーランタンを使う、と話す女性が多かったのが、印象に残りました。農村地域では、女性が暗闇の中、外のトイレに行く際に性暴力などの被害にあう危険があるのですが、ソーラーランタンのおかげで安全に行くことができるようになった、とのことです。

星:2013年と2014年にアフリカのケニアで難民キャンプに寄贈した際にも、女性の安全のためということが最も重要な用途の一つでした。「人間の安全保障」に関わることにも、ソーラーランタンは役立ちうるのだということを実感しています。最も脆弱な立場に置かれやすい女性や子どもたちにとって役に立つ支援を今後も続けていきたいです。

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できることを実践していくのが大事

今井:2013年7月、ソーラーランタンの活動を耳にし、初めてパナソニックさんに電話をしたのがすべてのはじまりでした。あの日のことを、今も昨日のことのように覚えています。あの電話が、本当に貧しい人々に明かりを届けるという成果につながり、嬉しく思っています。

星:はい、タイミングよく、カンボジア出張に私が出る前日でしたね(笑)。プノンペン滞在中、ご紹介いただいた現地のパートナー団体(LIFE WITH DIGNITY)をすぐに訪問することができ、その後はとんとん拍子に話が進み、2013年12月の寄贈が実現しました。なお、LIFE WITH DIGNITYには2014年11月に、2度目の寄贈をさせていただきました。

この2014年11月の寄贈まで含めて、現時点において、ソーラーランタン10万台プロジェクトとして累計3万台のソーラーランタンを寄贈することができました。しかし、世界には約13億の電気を使えない人たちがいます。私たちの10万台だけでは明かりを必要とする人々すべてを網羅することは当然できず、時に歯がゆく思うこともありますが、いろいろと工夫しながら、私たちとしてできる最善を尽くしたいと考えて取り組みを進めています。

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グリテベック:マザーテレサは「We cannot change the entire world, but we can change that small part of the world in which we live.(世界全体を変えることはできなくても、自分の住んでいる一部の地域なら変えることができる。)」と言っています。ソーラーランタンによって光熱費を削減し、浮いたお金を自立につながる消費に回していくことは、貧困から抜け出す第一歩です。ソーラーランタンは、人々の生活を着実によい方向に変えています。最大限の効果が出せる支援を行っていけるよう、今後3年間、継続的に調査を続けていく予定です。

森川:私たちは、他にも多くの団体と一緒に活動をしているので、たとえば地方の村に病院を作って運営しているNGOにソーラーランタンを寄贈する、といった活動なども今後一緒に取り組んでいけるとよいですね。

星:是非、今後も協力していきましょう。

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