ニジェールの人々に寄り添い、自立を支援:コモン・ニジェール

2015.06.15 Our Partners

多くの日本人にとって未知の国、アフリカにあるニジェールでは、ソーラーランタンの明かりが、教育支援において大切な役割を果たしています。「コモン・ニジェール」代表理事の福田英子さんにお話を伺ってきました(対談日 : 2015年5月11日)。

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自然の美しさと厳しさを併せ持つ国、ニジェール

田中 : 福田さんと知り合うまで、ニジェールとは全く接点がありませんでした。どんな国なのか、改めて教えていただけますか?

福田 : ニジェール共和国は、西アフリカのサハラ砂漠の真ん中にある、海のない内陸国です。国土の75%が砂漠ですが、山と砂漠が織りなす風景は、その美しさから「サハラの宝石」と称されています。私は以前サハラ砂漠の真ん中に住んでいたことがありますが、月のない夜の砂漠は、歩くのが怖くなるほど美しいですよ。ただ、人々の生活はとても貧しく、国連開発計画(UNDP)の人間開発指数では、最下位層に入っています。

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田中 : 西アフリカの国々は、最近ではエボラ出血熱の流行に見舞われ、国連のミレニアム開発目標(MDGs)の達成も、厳しい状況にありますね。

福田 : はい。まず、交通網が発達していないので、人や物の移動が少なく、支援の手が行き届きにくいという問題があります。また産業も乏しく、白くて固い土地ではたまねぎくらいしか作れず、井戸を掘っても水がなかなか出てきません。ただ、ウランは豊富にあります。あまり知られていませんが、実は日本は2011年まで30年以上、24時間中約1時間分の電気を、ニジェール産のウランで発電していました。

田中 : それは知りませんでした。日本とニジェールは、電気を通じて長いつながりがあったのですね。現地の電化状況はいかがですか。

福田 : 民生用の発電所はなく、多くの人が電気のない生活をしています。明かりがないことは様々な影響をもたらしますが、その最たるものが教育です。ニジェールは世界でも就学率が最も低い国のひとつで、昼間は親の手伝いで学校に通えない子どもが多いのですが、明かりがないと夜、勉強することもできません。教育を受けられないことが人々の自立の妨げとなり、貧困の悪循環から抜け出せない要因となっています。

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雄大にそびえたつサハラ砂漠の砂丘

現地の方が誇りを持てる支援を目指して

田中 : 活動内容についても教えていただけますか。

福田 : 私たちの活動には、現地で寺子屋を開設して子どもたちの教育を支援することのほかに、日本国内での講演会や写真展などを通じてニジェールのことをより多くの人に知っていただくことがあります。その際、たとえば飢餓や貧困をイメージさせるような痩せ衰えた子どもの写真はあえて使わないようにしているんです。厳しさだけでなく、ニジェールが持つ豊かな側面を伝えていくことで、現地の方々に誇りを持ってもらう、という視点を大切にしています。

田中 : コモン・ニジェールさんにも助成団体として参加いただいている「Panasonic NPOサポート ファンド for アフリカ」の報告会でも、アフリカに対する関心を高めていくには、ネガティブな側面だけでなく、自然や文化など、魅力的な側面を伝えていくことの重要性が指摘されていました。

福田 : 大切な視点ですよね。それに加え、ニジェールと日本は遠く離れていますが、どうしたらその距離を越えて思いを馳せることができるか、という点も意識しています。そのためにも、支援する側とされる側という一方的な関係ではなく、双方向の関係を常に大切にしています。

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ニジェールのことを多くの人に知ってもらうため、現地で聞いた話や体験を元に制作された『ニジェール物語』。日本語のほか、フランス語、現地語のジェルマ語に翻訳もされています。

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ソーラーランタンが、夜の授業や勉強を可能に

田中 : ソーラーランタン10万台プロジェクトでは、2014年3月に、合計200台のソーラーランタンを寄贈しました。現地ではどのように活用されていますか?

福田 : 半分を私たちが運営する寺子屋や、イスラームの聖典であるコーランなどを教えるコーラン学校で、残りの半分は、現地の2つの協力団体を通じて、診療所や学校で活用しています。学校といっても、たとえば寄贈先の1つのコーラン学校は、穴ぐらのような場所に大勢の子どもたちが集まって勉強しています。

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現地協力団体であるニジェール大統領夫人が設立した財団The Guri Vie Meilleure foundationと、母子保健分野で活動するNGO Women and Health Alliance Internationalへの寄贈式。

田中 : 現地の様子を撮影した動画を送っていただきましたが、大人も子どもも、とても喜んでいただいている様子が伝わってきました。

福田:寄贈の際には私も現地を訪ねたのですが、皆さん本当にうれしそうで、踊り出していましたよ(笑)

診療所への寄贈の様子を撮影した動画

田中 : ソーラーランタンの用途として、私たちが重視している分野のひとつに、教育があります。教育において明かりがどのように貢献できるとお考えですか?

福田 : 無電化地域にある寺子屋で夜の授業ができるのは、ソーラーランタンのお陰です。また、夜に家で勉強をしたいという子どもたちのために貸し出しもしていますが、その際、年長の子どもがいる家庭で利用していただくようにしました。すると、小さな子どもたちが集まってきて、字を知っている子が知らない子に教えるんですね。そうして学びの輪が少しずつ広がっていく。今では子どもたちの勉強に、欠かせない存在です。

田中 : 先進国では普段当たり前のようにあるので気づきにくいですが、明かりは人と人のつながりを作りだしますね。ソーラーランタンの下に子どもたちや家族、近所の人が集まって、勉強をしたり話をしたりしている様子などをみると、目に見えるモノ以上の何かを提供できたのかな、と感じます。

福田 : それだけでなく、学びたいという欲求を生み出す動機付けにもなっています。ソーラーランタンの明かりを見て、「太陽の光で明かりがつくなんて!」と科学的な興味を持つ。ある子どもは、ノートに一生懸命に書いた字を見せながら私に言うんです。「これは普通の字じゃないよ。太陽の光でできた明かりの下で描いたから、特別な字だよ!」って。子どもの心に大きな刺激を与えていると思います。

福田 : そうですね、そこはまさに私たちが目指している支援の形です。外から何かを与えられて強くなるのではなく、自分で道を切り開いていく強さを内側から育んでいくような支援をしていきたいですね。

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ソーラーランタンを手に笑顔の家族

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こちらの家庭では、以前は懐中電灯を耳にはさんで照らしながら勉強をしていました。

田中 : 寄贈は通過点なので、現地の人たちの自立にソーラーランタンがどれだけ貢献できているか、これからもぜひ、詳しい情報を教えてください。

福田 : もちろんです。今後もさらに発信力を高め、ニジェールのことを広めながら、現地で本当に求められる支援を続けていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。