貧困層の人々に真に求められる製品を届ける:NPO法人コペルニク

2015.11.18 Our Partners

2015年2月、パナソニックは寄贈先団体であるNPO法人コペルニクを通じて、インドネシアのソネ村の人々と、東ヌサ・トゥンガラ州にある50の診療所にソーラーランタンを届けました。今回は、コペルニク・ジャパン代表の天花寺宏美さんをお招きし、現地ニーズをどのように活動に反映しているのか、をテーマに語りました。(対談日:2015年9月24日)

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「革新的なテクノロジー」を途上国の人々へ

奥田 : インドネシアでの寄贈にあたっては、大変お世話になりました。改めて、コペルニクの事業について教えてください。

天花寺 : コペルニクは、国連職員として活動してきたメンバーによって2009年に創設されました。途上国の人々の生活向上と自立を目指し、「革新的なテクノロジー」を現地の人々に届けています。現在は、日本とインドネシアに拠点をもち、途上国で活動を行い、これまで24カ国でプロジェクトを行いました。

これまで、途上国の人々の生活改善を目指して多くの製品が開発されてきましたが、高価すぎたり現地の人々のニーズに合っていなかったりすると、せっかく作った製品も使ってもらえません。そこで私たちは、まず最貧困層の人々の生活や課題を把握するため、現地のリソースを最大限に活用してニーズを調査し、本当に必要とされる製品とのマッチングや開発支援を行っています。

奥田 : 具体的には、どのように現地の人たちのニーズを調査しているのですか?

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天花寺 : コペルニクには、途上国で活動するNGOや学校、企業など、提携している「現地パートナー」が各地にいます。村の有力者とも信頼関係があり、現地の人々のニーズや経済状況を熟知しています。

また、インドネシアで展開している「テクノロジー・キオスク」も、人々の声を聞き、必要な製品を届けるために役立っています。テクノロジー・キオスクは、売店のオーナーがその他の商品とともにコペルニク製品を販売し、売上に応じて取り決めた金額をコペルニクに返済する仕組みです。製品を売る販売員や店員に向けて研修やトレーニングを積極的に実施し、製品販売後も顧客をサポートする体制をつくることで、製品の流通チャンネルの拡大が可能になるのと共に、利用者の声を収集し、フィードバックに役立てています。

夜間の診療に役立つソーラーランタン

奥田 : 今回、全世界から募集したデザインをもとに製作したシェードを一緒に届けるCut Out the Darknessでのソネ村への寄贈のほか、東ヌサ・ティンガラ州北部中央ティモールにある50の診療所にも200台のソーラーランタンを寄贈しました。診療所はどのような基準で選んだのでしょうか?

天花寺 : 選定にあたっては、現地パートナーに相談しました。村の有力者にヒアリングをしながら、電気が通っているかどうか、施設の設備状況、地域の貧困の度合いなどを考慮して決めました。

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奥田 : なるほど。寄贈から数カ月後には、いくつかの診療所でモニタリングを実施いただきました。結果を見ると、灯油ランプへの支出が減り、安全に明かりが使えるようになったと満足いただいているようでうれしいです。そのほか、夜間の突然の事故や病気による急患の治療、お産などの場面で重宝されていて、携帯電話の充電機能も役立っているようですね。逆に、何か要望はありましたか。

天花寺 : 利用者の満足度は高く、特に「簡単に使えること」が好評でした。携帯電話を手軽に充電できるのも良かったようです。要望としては、「取手のほかにフックのようなものがあるとさらに便利」「バッテリーケーブルを抜かなくても電源を切れるようになれば、なお良い」といった声もありました。

奥田 : ありがとうございます。開発チームにもフィードバックしたいと思います。

天花寺さんにも参加いただいたCut Out the Darknessの様子

ビジネスと社会貢献の間で

奥田 : 寄贈のご相談をした際、天花寺さんが当初、「寄贈でなく販売できないか?」と言っていたのが印象的でした。

天花寺 : そうでしたね。コペルニクでは、通常、製品を買ってもらうビジネスのアプローチで、途上国の人々に製品を届けています。なぜなら、貧困や格差の問題を解決するには、支援する側とされる側の「依存関係」を断ち切り、途上国の人々との対等なパートナーシップを築く必要があると考えるからです。販売時には、現地に適した価格を設定する、分割払いを可能にするなどの工夫をしています。

奥田 : 寄贈は行わないのですか?

天花寺 : いえ、無償配布は絶対にやらないというわけではありません。たとえば今回寄贈した診療所のような公共施設は予算がないことが多く、また地域の拠点として様々なインパクトをもたらす場所でもあるので、そうした場合には寄贈という選択肢をとることもあります。

奥田 : 依存ではなく対等な関係性をもつことは重要な視点です。「ソーラーランタン10万台プロジェクト」でも、現地のニーズをよく知るNGOと連携し、本当に必要としている人や場所を見極めて寄贈先を選定するよう心がけています。

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天花寺 : 特に企業にとっては対等な関係性が構築できないと、ユーザーから適切なフィードバックを得られず、商品の改良もできません。

奥田 : 「本当にほしい」と思ってもらえるものづくりを行い、現地でビジネスを行っていくためにも、必要不可欠な視点ですね。コペルニクのアプローチは、これからもぜひ参考にさせていただきたいですね。

天花寺 : ありがとうございます。パナソニックの社会貢献活動と途上国向けの製品開発は日本企業のなかでも一歩進んでいると感じています。今後は寄贈とビジネスをうまく融合させながら、社会・経済双方の視点で世界により一層のプラスのインパクトをもたらす取り組みを展開されることを願っています。

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