農村地域で雇用を創出し、子どもが売られない世界をつくる:かものはしプロジェクト

2014.04.30 Our Partners

子どもが売られる問題をなくすための活動を続けているかものはしプロジェクトでは、カンボジアの貧しい農村地域で経営するコミュニティファクトリーでソーラーランタンが活用されています。かものはしプロジェクト共同代表・村田早耶香さんに活用方法や成果についてお伺いしました。(対談日:2014年3月17日)

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経済成長の一方、格差が拡大しているカンボジア

星:カンボジアには今まで6回訪れましたが、経済成長が近年著しく、都市部では行く度にさまざまな変化を目にしており、驚いています。

村田:カンボジアの経済成長率は、ここ数年7%台で、国民の所得は全体的に上がってきています。しかし、一方で最貧困層の人たちは貧困サイクルから抜け出せず、格差はひろがってきています。最貧困層の人たちが底上げされるような支援が、今求められています。

星:そうなんですね。確かに首都プノンペンなどの都市部と農村部との格差は本当に大きいですよね。まるで別世界のようだと感じました。

村田:はい。子どもが売られてしまう背景には、家庭が貧困状態にあることが原因の一つなのですが、被害者も都市部から農村部の貧困層に変わってきています。

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最貧困層の女性向けに仕事を創ることが、子どもを守ることにつながる

村田:私たちの活動の目的は、子どもが売られる問題をなくすということです。カンボジアでの活動は、子どもを売らせない活動と子どもを買わせない活動の大きく2つに分かれます。要は、売り手と買い手の両方を減らすということです。前者にあたるのが、大人が安定的な収入を得られるようにし、子どもを売らざるを得ない貧困から抜け出してもらうために始めたコミュニティファクトリー事業で、後者にあたるのが警察による取締り強化を支援するものです。

コミュニティファクトリーでは、名刺入れ、エコバッグやブックカバーなど約20種類の雑貨を製作しています。シェムリアップ中心に直営店4店舗で販売しており、品質がいいと好評いただいています。日本からはインターネットでも購入することができます。

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コミュニティファクトリーで生産されている名刺入れ。

星:い草の名刺入れは、私も気に入って愛用させていただいています(笑)。

村田:ありがとうございます。使っていただいてとてもうれしいです。

星:前回の寄贈の際、新しくできた第2工房のサテライトファクトリーも見学させていただきました。活動を着実に広げられているのが印象的でした。現在何名くらいの女性が働かれているのですか。

村田:全体で約130人の女性が働いています。年代は10代後半から40代半ばぐらいで、月〜土曜まで朝7時〜夕方5時まで勤務し、途中で2時間の昼休みをはさみます。カンボジアは伝統的に田植えと稲刈りを家族総出でやる風習があるので、その時期はお休みを自由に取れるようにするなど、なるべく農村の生活に合わせて柔軟に働けるようにしています。

星:そうした配慮は重要ですね。女性の方はどういったプロセスを経て工房で働くようになるのですか。

村田:まず、日本の市にあたるコミューンのチーフや村長さんと話をして、地域の貧しい家庭をリストアップしてもらいます。次に、選出してもらった人たち向けに村役場で説明会を開き、意欲のある人を募集し、その人たちを一軒一軒、家庭訪問します。家族構成や家畜や家財道具、家の材質や土地の面積などを見て総合的に判断し、優先順位をつけて受け入れをしています。

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2013年12月、サテライトファクトリーの従業員の方たちと撮影した一枚。

コミュニティファクトリー内のあらゆる工程で活用されるランタン

星:工房内でどのようにソーラーランタンが活用されているか、改めて教えていただけますか。

村田:工房には電気が通っていないので、あらゆる工程でランタンが活躍しています。雨が降っている日や夕暮れ時など、工房内が薄暗い時に使用しています。 雑貨を作るときには細かい作業が多いのですが、ランタンのおかげで作業しやすくなり、製品の品質を保つのにとても役立っています。女性の眼精疲労も改善しているようです。

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工房内でミシン作業をする女性の手元をソーラーランタンが明るく照らしていました。

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い草の選別工程(左)やい草のカッティング工程(右)でもソーラーランタンが活躍しています。

星:そう言っていただけるとうれしいです。お昼休みに行われている識字教育のクラスでもユニークな使い方をしていただいていますね。女性のほとんどが出席し、にぎやかに授業が行われていたのが印象的でした。

村田:はい、近所の小学校の先生を招いて行っているのですが、出席率の高い女性にはインセンティブとしてソーラーランタンを貸し出しています。家で勉強する際に使っていただいています。

星:ところで、前回寄贈させていただいた、新型ソーラーランタンの評判はいかがですか。

村田:小さくて持ち運びがしやすく、現地からもデザインがかわいいという声が多く届いています。評判いいですよ。

星:ありがとうございます。デザインについては前のモデルから様々な工夫が重ねられています。たとえば、上から吊るすときに取っ手が引っかかりやすい形状になっているんです。今後もニーズに合わせて、改良を重ねていくつもりです。

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事業活動を通じて、根本的な社会課題解決を

星:現地で130人の雇用を生み出しているのは本当にすごいことですよね。

村田:ありがとうございます。実際にカンボジアでは女性向けの仕事はあまり多くありませんし、父親が出稼ぎに出て、そのまま帰ってこなくなったり病気になって亡くなったりというケースもあります。両親がいない、または母親しかいない家庭の子どもが最も売られやすいので、女性が安心して仕事ができて、十分な収入が得られ、生活を安定させることで家族が一緒に暮らせる、というのは農村部の人たちにとって大きいことなんです。

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星:なるほど、そうなんですね。雇用を創出することで貧困をなくしていくのは根本的な対策になりますし、事業活動を通じた貧困層へのアプローチは素晴らしいと思います。
最後に、農村でのソーラーランタンの活用について何かご要望はありますか。

村田:そうですね、夜中屋外のトイレに行くときや、通学途中に暗い道を通らなければならないときに明かりがあったら、防犯に役立つと思います。実際に女性が襲われるなどの事件も起きており、現地の女性にとっては深刻な問題ですから。また、コミュニティファクトリーの運営にご協力いただいている村長や警察から「ソーラーランタンを借りたい」という要望がありますので、村のために活動しているそういった方々への貸し出しができるとありがたいですね。

星:なるほど。明かりを通じて地域の重要なステークホルダーとのつながりを深めることができますものね。そこは、現場の実情に基づき、必要に応じて対応いただいてもよいのではないかと思います。かものはしプロジェクトさんとは、それぞれがもつ強みを生かしながら、今後も社会課題解決のために何かご一緒できればいいなと思います。

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