アフリカの人々に希望をもたらす、ソーラーランタンの明かり:日本赤十字社

2014.09.15 Our Partners

明かりは人生に希望の光を照らす―難民や帰還民など社会で最も脆弱な立場にある人々にとって、明かりのもたらす力は計り知れないほど大きなものがあります。東アフリカ地域の寄贈先団体、日本赤十字社の五十嵐さんに伺いました。(対談日:2014年7月28日)

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現場のプロフェッショナル、日本赤十字社との共同事業

田中:お久しぶりです。五十嵐さんはアフリカに赴任されて、今年で何年目ですか?

五十嵐:7年目に入りました。現在は、日本赤十字社国際部の東アフリカ地域代表として、ケニアのナイロビを拠点に、ケニアと周辺国の現地赤十字に対し、資金面、技術面でのサポートをしています。現場を定期的に訪れ、赤十字スタッフ、ボランティア、村人と話をしながら様々な活動を円滑に行えるようにしています。

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田中:私は、まだケニアには行けていないのですが、東アフリカ全体の状況はいかがですか?

五十嵐:飛行機に乗れば20時間くらいでつきますよ(笑)。東アフリカと一口に言っても、言語も文化も多種多様です。ソマリアやルワンダ、ブルンジなど内戦を経験した多くの国では、難民や本国に戻った帰還民が全てを失った状況で苦しい生活を送っており、大きな問題になっています。また、ケニアは経済成長が著しく首都ナイロビには大きなビルが立ち並ぶほどですが、地方と都市の格差がかなり大きく、この問題も無視できません。

田中:五十嵐さんとは4~5年前にお会いして以来のおつきあいですが、2013年度のアフリカ地域への寄贈にあたり、信頼性のある団体、担当者と一緒に進めたいと思った時に最初に浮かんだのが五十嵐さんでした。

五十嵐:ありがとうございます。プロジェクト内容をお聞きし、寄贈先としてケニア、ブルンジ、ウガンダの三国を提案しました。特にケニアにある世界最大のダダーブ難民キャンプと、ブルンジにいる紛争からの帰還民の暮らす地域にいる、最も脆弱な立場の人々に明かりを届けたいと思いました。
(ソーラーランタンの活用状況については現地からのレポートもあわせてご覧ください。)

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「明かり」がレジリアンスを高め、人々の自立につながる

田中:現地でソーラーランタンはどのように使われているのですか?

五十嵐:ブルンジでは、帰還民の人々が毎日、日没から就寝まで、勉強や携帯電話の充電に使っています。寄贈先の家庭に近所の方たちも集まり、明かりを共有しています。これは実はすごいことで、今まで助けられてばかりだった人々が、地域で役立つ存在となることで、尊厳を取り戻し、自立への新しい一歩につながっているんです。

とある家庭では、昼間家の前に充電のためソーラーパネルを置くときは盗まれないよう、夕方になるまで誰かが1日中見張りをしているほど大切にしてくれています。明かりが彼らに与えたものは本当に大きく、レジリアンスを高める大きな助けになっていると感じています。

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田中:今、「レジリアンス」という言葉が出ましたが、この言葉は正確にはどういう意味なのですか??

五十嵐:「レジリアンス(しなやかさ、回復する力)」という言葉は、「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」と使われたり、基本的には災害などのダメージを受けても自ら元に戻れる力のことを言います。たとえば、帰還民の人々は何も持たない状況で帰還してきたので、とにかく貧しく、ボランティアに頼り切った生活をずっとしていました。それではいけない、ということで、グループで家庭菜園を始め、最初は自分たちの食糧にし、余ったらそれを売って生活の糧にするといった方法でレジリアンスを高める支援をしています。

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夜の勉強時間が、将来の自立につながります。

田中:ソーラーランタンによって薪などの燃料費を節約できた、という現地からの声もお聞きしました。節約できたお金は皆さん何に使われるのでしょうか?

五十嵐:まず子どもの学費、次に医療保険に使いたいそうです。これまで私たちが行ってきた健康や栄養教育をきっかけに、生活を自らの手で組み立てていこうという意識改革が現地の人々に起きています。節約できたお金をそのための行動に使えれば、長期的に大きな変化につながっていくと思います。

田中:その日暮らしだった生活が、将来を見据えた生活に変わりつつあるのですね。私たちの願いは、ソーラーランタンの寄贈によって人々が自立していく上での支えとなること。日本赤十字社さんが提供されている目に見えない教育などのソフトの部分と、私たちメーカーが提供できるモノの部分とで相乗効果を発揮していけると嬉しいです。

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あきらめていた将来に、希望の光が見えた

田中:約40万人が暮らすケニアのダダーブ難民キャンプにもソーラーランタンを寄贈させていただきましたが、現地の状況はいかがですか?

五十嵐:現在、ソマリア、スーダン、コンゴ等からの難民が暮らすダダーブ難民キャンプには外国人がほとんど入れないので、ケニア赤十字社に管理、報告をお願いしています。難民の中にはソマリアに帰る人も出てきていますが、本国ではまだ紛争が続いており、難民キャンプ設立からもう20年になるため、難民キャンプで生まれ育ち母国を知らない若者も多く、帰還は容易な作業ではありません。

田中:帰りたい思いがあっても、平和にならないと、難しいですね・・・。どんな基準で配布先を決めたのですか?

五十嵐:女性の人権と子どもの教育を重視し、性的暴行を受けた経験のある女性や、親がいない家庭、小中学生の子どものいる家庭に配布しました。難民キャンプでは女性が夜間トイレに行く際に性的暴行を受けてしまうケースがあとをたたないんです。赤十字は継続的に「こころのケア」を行っていますが、明かりがあることにより、更に、女性たちは安全、安心を得られます。

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明かりは女性たちに安全と安心をもたらします。

また、子どもたちは「夜に勉強ができる!」と喜んで、勉強に取り組んでいます。チャンスがなかった人にチャンスが与えられるのは、すごいこと。「本国に帰った時に職業に就くことが難しい」とあきらめてしまうところ、ソーラーランタンによって勉強ができることで、人生に光を見出す機会を創っていくことができます。楽しみに、見守っていくつもりです。

田中:寄贈できるのは限られた台数ですが、ケニアでは今後ソーラーランタンを販売もしていく予定です。経済的に余裕がある家庭には、購入いただくことで、少しでも多くの方に使っていただけたらと思います。

明かりは、人のつながりや思いやりを増強させる

五十嵐:寄贈先を訪ねて回った際、受け取った人たちの心の底からの笑顔や、感謝のことばを聞き、明かりのもたらすパワーを再確認しました。明かりは安全、安心だけでなく、人のつながり、思いやりを増強させ、人々に希望をもたらします。そういえば、寄贈先の人々からパナソニックさんに伝えて欲しいとメッセージを預かってきました。「寄贈してくれて本当にありがとう」と。

田中:本当ですか。とても嬉しいです。赤十字さんには、カンボジアやミャンマーでも、寄贈先としてお世話になっています。お互いの強みをうまく活かしながら、これからも一緒に社会課題の解決に取り組んでいきたいです。

五十嵐:全世界189ヵ国のどこにでもボランティアがいるという赤十字ネットワークの強みを生かして、今後もソーラーランタン10万台プロジェクトにご協力できればと思います。
人々の自立や地域の活性化への良い成果を今後もご報告できるよう、現地の方々と一緒に、活動に力を注いでいきます。

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