「手仕事布」で日本とインドをつなぐ:CALICO

2015.08.14 Our Partners

インドの手織り布の力によって、農村に誇りと持続的な発展をもたらす活動に取り組むCALICO代表の小林史恵さん。「手仕事布」の魅力や文化的価値、農村女性の支援について話を伺いました。(対談日:2015年6月)

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インドの人も気づいていない古くて新しい価値

奥田 : ソーラーランタン10万台プロジェクトでは、これまで多くの国や地域に明かりを届けてきました。2015年3月には、CALICOと現地NGOのBindaas Unlimited Trustを通じて、インドの女性たちの雇用創出と伝統文化の継承につながる寄贈が実現しました。

小林 : 寄贈いただいた明かりは、Bindaasが支援するインドの農村で手仕事布をつくる女性たちが活用しています。私たちCALICOはその布を使った衣類や生活雑貨をデザイン・プロデュースする事業を手がけています。

奥田 : インドでは、織物を手がける女性たちをよく見かけますが、手織り布の主な生産地なんですよね。

小林 : そうなんです。現在世界の手織り布の95%以上がインドで生産され、約430万人の織人が支えていると言われます。しかし近代産業が発展し、賃金差も拡大したことで、次代の担い手を失いつつあります。CALICOは、そんなインドの農村に伝わる「手仕事布」を継承・普及していくため、2012年に設立されました。手仕事布には、カディという手紡ぎ・手織り布やカンタと呼ばれる刺しゅう布などさまざまな種類があります。

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CALICOが手がける手仕事布のコレクション。色とりどりのデザインが並びます。

奥田 : 小林さんと初めてお会いしたのは、途上国・新興国の社会課題解決について知見を深めるための社員向けワークショップに、講師として来ていただいたときですよね。そもそもインドで布にかかわる事業を始めたきっかけはなんですか?

小林 : 前職で経営コンサルタントとしてインドにいたとき、マハトマ・ガンジーの言葉に出会い、感銘を受けたのが一つのきっかけです。反英独立運動の際、イギリス製の綿製品ではなくインドの伝統的な布をまとい、「Khadi is not just a cloth. It is thought.」と言った彼の言葉は、今もインド人の誇りです。でも、かつて日本の織物産業がそうであったように、急速な経済成長とともにインドの伝統産業も衰退の危機にあります。素晴らしい織物たちをこの地球からなくしてはいけない、そんな思いで立ち上げました。

奥田 : 手仕事布という文化を次世代に紡ぐ活動をされているのですね。実は私もCALICOさんの製品のファンなんです(笑)。何よりも手触りが違いますよね。

小林 : ありがとうございます。手仕事布の価値は、インド人自身も気づいていなかったりします。農業とともにあり、たくさんの人に仕事をもたらす手仕事布の偉大な存在を再認識する、その一助になれればと考えています。

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マザーテレサのサリーにインスパイアされたデザインの布。それぞれデザインや織り方に特徴があり、1つとして同じものはありません。

インドと日本をつないだ一人の農村女性

小林 : 今回寄贈いただいたソーラーLEDライトは、インドの中でも特に貧しいビハール州の農村で活用されています。私たちのパートナーであるArchanaさんという女性が、現地NGOとのつなぎ役になり、今回の寄贈が実現しました。

奥田 : 私もお会いしましたが、物腰柔らかく、でも私がインドに来ていると知って翌日には夜行列車に乗って「来たよ!」と会いに来てくれるような、熱意を持って活動されているパワフルな方ですよね。

小林 : 彼女は、ビハール州パトナ近郊の村に生まれ、NGOの支援で15歳のときに刺しゅうのデモンストレーションのためにニューヨークへ行ったことが、人生の転機となりました。その後デザイナーとして、もともとビハールに伝わる柄に彼女の独創的なメッセージを加えたデザインを手がけ、農村の女性たちに刺しゅうの仕事をつくるNGOも自ら運営しています。

奥田 : Archanaさんは、さっそくソーラーLEDライトをモチーフにしたデザインの布をつくってくださって。それを見せてもらったときには、感動しましたね。現地の人々にとって明かりというのは、それだけ大きな影響を与えるものなのだと再認識しました。

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農村女性がソーラーLEDライトを使用している様子をデザインしたアルチャナさん(左)

人と人とをつなぐ「明かり」

奥田 : ビハール州は電気が通っていない村も多いですが、明かりはどんなふうに活用されていますか?

小林 : 刺しゅうを手がけている家庭など活用されています。これまで女性たちは日中の農作業の合間や、夜暗いケロシンランプの下での刺しゅうを行っていましたが、ソーラーLEDライトが来てからは、明かりの下で効率的に作業できるようになっています。夜間にはできなかった家事や子どもたちの勉強もできるようになり、人々の生活が大きく変わり始めています。

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奥田 : 特に刺しゅうのような細かな手仕事は、暗いケロシンランプの下だと目への負担も大きいですからね。インド製のソーラーLEDライトは、苦労の末、現場の熱意と努力でやっと作り上げた経緯があります。役立てていただいていると聞いて嬉しいです。

小林 : 私たちの活動は、人類の資産でもある手仕事を、未来につなげていくことを最も重視しています。偉大なインドの手仕事布の力によって、農村に本来の誇りと持続的な産業発展をもたらしつつ、布や衣に対する人々の豊かな感性を呼び醒ますことができればと願っています。

奥田 : ソーラーLEDライトの明かりの下で手仕事布がつくられ、日本とインドの農村社会の人々をつないでいく。人々の生活を明るく照らす以上の、人と人とをつなぐ役割を、ソーラーランタンの寄贈活動を通じて果たしていきたいです。これからもよろしくお願いします。

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