2018.01.26Our Partners
官民パートナーシップの役割と期待:UNDP駐日代表事務所
2016.11.17 Our Partners
パナソニックは、2016年3月、バングラデシュで活動する4つの団体に760台のソーラーLEDライトを寄贈しました。寄贈先のひとつ、路上で生活する子どもたちへの教育支援を続けるエクマットラ顧問の渡辺大樹氏と、パナソニックCSR・社会文化部の奥田晴久が対談しました。(対談日:2016年8月14日)
奥田:直接お会いするのは、昨年7月にバングラデシュでお会いして以来ですか。お久しぶりです。最近、外国人を対象とした襲撃事件が相次いでいますね。今年7月にもダッカで多数が犠牲になるテロ事件があり、心配していました。
渡辺:ありがとうございます。エクマットラの活動や子どもたちへの直接の影響はありませんが、安全管理をこれまで以上に意識しています。
奥田:ネガティブなニュースを耳にすることが多いバングラデシュですが、私はあのエネルギッシュな雰囲気が大好きです。貧富の格差は激しいものの、「頑張れば未来がある」と希望を持って前に進もうとする勢いが感じられます。
渡辺:バングラデシュは近年、急速な経済成長を遂げています。特に首都ダッカは、豊富な労働力と潜在的な市場規模が注目され、国内外から多数の人が集まり、活気づいています。他方で、インフラ整備が追いつかず劣悪な環境下で生活する人が少なくなく、農村部との格差も広がる一方です。
奥田:社会がよりよく発展していくためには、子どもたちが将来を担う人材として育っていくことが重要ですね。エクマットラの活動は、子どもたちの未来、さらには国のこれからをつくることにもつながる重要な取り組みですが、改めて設立の思いを教えてください。
渡辺:タイのプーケットでスラムの子どもと出会った時の衝撃が忘れられず、何か行動に移したいと考え、バングラデシュに渡航しました。その後、入学したダッカ大学で出会った現地学生の仲間たちとともに、2003年に、路上で暮らす子どもたちと交流し、彼らの厳しい状況を知ったのがエクマットラ立ち上げのきっかけです。ダッカには、100万人以上とも言われるストリートチルドレンがいますが、彼らの多くが売春や麻薬の密売といった違法行為や重労働を強いられています。大人たちの思惑に翻弄されながら、一生社会の闇で生きていかざるを得ない過酷な現実に追い込まれていくのです。
奥田:ダッカでは、小さな子どもたちが重い荷物を運んだり物乞いしたりする姿を見ました。厳しい環境に置かれているわけですが、一方で屈託のない笑顔が印象的で、とてもたくましく生きています。エクマットラはそんな彼らの可能性を見出し、育てていく取り組みを続けていますね。
渡辺:エクマットラの活動は、路上生活を余儀なくされ、様々な理由で学校に通えない子どもたちに、基礎的な読み書きや音楽などを教える「青空教室」からスタートしました。これを第1ステップとすると、2004年には、青空教室を通じて学ぶ意欲を持った子どもたちのための第2ステップとして、「チルドレンホーム」を開設しました。そこでは、ずっと路上で生きてきた子どもたちが、衣食住を共にしながら集団生活のルールや社会性を身につける訓練を積むことができます。
奥田:チルドレンホームを訪問したときにお世話になった男の子は元気ですか?
渡辺:ディプーですね。彼は今年11月にダッカ大学を受験するため、必死で勉強しています。ダッカ大学は日本の東大にあたる国立トップの大学で、彼以外にも3人の高校生が受験する予定です。
奥田:路上で生きてきた子どもたちが、国の最高学府に挑戦する。素晴らしいことです。彼らの"今"は、エクマットラなくしてありえませんね。
渡辺:ディプーとは6歳の頃からずっと一緒で、運命共同体のような存在です。かつて路上で生活していた彼が、今は「同じような境遇の子どもたちにチャンスを与えたい」と話しているのを聞くと、とても感慨深いですね。
奥田:そして、全寮制の職業訓練施設として、もうすぐ「エクマットラアカデミー」が完成するのですよね。
渡辺:はい。青空教室やチルドレンホームに続く3つ目のステップとして、アカデミーでは将来自分の力で生きていくための英語やITの技術を学びます。そして、文化的素養や人間性を養い、スケールの大きな価値観を持って周囲を引っ張っていける次世代のリーダーを育てたいと考えています。実現できれば、路上で暮らす子どもたちの希望にもなります。
奥田:ソーラーLEDライトの評判は、いかがでしょうか。どのように活用されていますか?
渡辺:デザインがかっこよく、コンパクトでありながらバッテリーの持ちが良いので好評です。使い道は子どもたちからアイディアが出され、主に停電の多いダッカのチルドレンホームで停電時に使用されています。学校の勉強についていくには予習・復習が不可欠ですが、停電になると真っ暗で思うように勉強することできませんでした。でも今はソーラーLEDライトの明るい光の下で集中力を切らすことなく勉強を続けることができます。
奥田:アカデミーでは、どのように使う予定ですか?
渡辺:アカデミーが完成した暁には、夜間学習や併設する図書館で活用する予定です。また、子どもたちの親の就労状況に着目し、近隣の無電化村で女性たちのクラフトづくりもサポートしており、そこでも活用していく予定です。
奥田:子どもたちの貧困に直結する課題にも力を入れているのですね。アカデミーで切磋琢磨する子どもたちや無電化の村の人々の未来を照らしていけるよう、私たちもできることを続けていきたいです。
渡辺:バングラデシュでは、ソーシャルビジネスが活発で社会的に意義のある活動が受け入れられやすい素地があります。「Made in Japan」のブランド力を生かして、これからもこの国の将来を一緒に支えてください。よろしくお願いいたします!